世界中のありとあらゆる工場の自動化を支えるのがキーエンスだ。新型コロナ禍をものともせず、2022年3月期は最高益更新も見据える。逆境に負けない強い風土を作る極意とは。(聞き手は磯貝高行)
■掲載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)驚異の営業利益率55%、時価総額国内3位 キーエンスの強み
(2)キーエンス シェア獲得の武器は神出鬼没の営業パーソン
(3)キーエンス 1000本ノックで鍛える営業力、囲い込みは「ダサい」
(4)「予定は1分刻み」「接待厳禁」 キーエンスの豆知識
(5)ローソンも飛びつくキーエンスのソフト データ分析が次の鉱脈
(6)三菱商事もうらやむ高年収 驚異の数字が語るキーエンスの実力
(7)キーエンスは現代の「奇兵隊」 習慣化で弱さ克服
(8)キーエンス中田社長が断言、「他社にはまねできない」(今回)

キーエンス社長。1974年生まれ。兵庫県出身、47歳。97年関西学院大学法学部を卒業し、キーエンスに入社。営業畑を歩み、2018年センサ事業部長、19年取締役センサ事業部長兼事業推進部長に。19年12月から現職。(写真=行友 重治)
2021年4~12月期連結決算では、売上高と営業利益が過去最高を更新しました。要因は何でしょうか。
中田有キーエンス社長(以下、中田氏):1年前の同時期は新型コロナウイルスの影響で減収になりましたが、この9カ月は売上高が44.7%増と良い結果になりました。国内外で自動化ニーズや生産性向上に対する設備投資が一気に戻りました。
このままなら通期でも過去最高益となりそうですが、業績予想を出していないのはなぜでしょうか。
中田氏:環境変化は、読もうと思っても不可能です。新型コロナを誰も予想できなかったですし、こうしたことで一喜一憂するのは、あまり意味がないと考えています。同様に中期経営計画もありません。着実にやるべきことを見極めることの方が大事です。
半導体不足が続いています。キーエンスの代名詞である、受注後の「当日出荷」に影響は出ていないですか。
中田氏:あるといえばありますが、他社と比べれば軽微だと考えています。
特別な「隠し玉」を持っているわけではありませんが、あえて挙げるなら理由は2つあります。
まずはグローバルで「直販」体制を築いていること。世界中のどの業種で、どれぐらいの設備投資が見込めそうかという情報が、リアルタイムで我々の元に入ってくる。顧客が仕様を決める前からチームに参加することもあり、実際の投資タイミングに先駆けて動向が分かるのです。
付加価値は理解してもらえる

もう一つは「当日出荷」に対する強い思いですね。営業から生産管理、調達、物流、協力工場に至るまで全力で取り組んでいることが、他社との圧倒的な違いです。これまで多くの危機に直面しましたが、我々は当日出荷にこだわり続け、工夫を積み重ねてきました。見込み生産や在庫の抱え方を何十年も考え続け、トラブル時の対応力もあります。
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