キーエンスは人材育成手法も独特だ。「ロープレ」で顧客との商談に備え、「外報」を使って予定を分刻みで管理。重要な気づきは「ニーズカード」に記録する。個の能力を高めつつ、情報を全社で共有する文化が組織そのものを強くする。

■掲載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)驚異の営業利益率55%、時価総額国内3位 キーエンスの強み
(2)キーエンス シェア獲得の武器は神出鬼没の営業パーソン
(3)キーエンス 1000本ノックで鍛える営業力、囲い込みは「ダサい」(今回)
(4)接待厳禁、キーエンスの豆知識
(5)工場飛び出し商機発見、ローソンも飛びつくデータ分析ソフト
(6)三菱商事もソフトバンクも尻目 数字が物語る実力
(7)顧客すら知らない価値発見 キーエンスの強さは習慣化

センサ事業部で営業を担当する兼田真吾さんは毎日のようにロープレを繰り返し、顧客への対応力を磨く(写真:村田 和聡)
センサ事業部で営業を担当する兼田真吾さんは毎日のようにロープレを繰り返し、顧客への対応力を磨く(写真:村田 和聡)

 1月中旬、金曜日の18時。キーエンスの東京営業所(東京・港)で1日を締めくくる恒例行事、「ロープレ」が始まった。

 「現在は指の第一関節ほどですが、以前はこぶしサイズでした」「どうやって小型化したか。この緑色のレーザーがポイントなんです」

 工場で使うレーザーセンサーを持って熱弁を振るうのは、入社9年目でセンサ事業部チーフの兼田真吾さんだ。ロープレはロールプレイングの略語。2人1組で顧客との商談を事前にシミュレーションする、キーエンス独自の人材育成手法である。

 「言葉の選び方、話す順序を変えるだけで伝わり方が全然違います」と兼田さん。顧客役の社員が「断ったとき」や「迷っているとき」の状況や購買・現場など担当者ごとの反応を演じ分けると、兼田さんの説明スタイルも変わっていく。

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