「仕事は生活のリズムの一つ。私に定年はありません」──。こう語るのは、ねじを扱う専門商社サンコーインダストリー(大阪市西区、サンコーID)の総務部で社員として働く玉置泰子さんだ。玉置さんは91歳。「世界最高年齢の総務部員」としてギネスブックに世界記録として認定された。

玉置さんは1956年に入社。約430人が働く同社の「総務部長付課長」として、主に経理や庶務を担当する。自身の仕事机に置かれた2台のパソコンモニターを眺めながら、表計算ソフト「エクセル」をすいすいと使いこなし、給与計算や財務資料の作成などをする。入社から65年間、週5日午前9時から午後5時半のフルタイムで働き続けている。
70歳を超えている玉置さんは厚生年金の被保険者資格を失っており、厚生年金保険料を払っていない。年金を受け取る側だが、働いているため、在職老齢年金に該当し、支給される年金は一部カットされている。だが、「働くことが楽しいから」と気にする様子がない。

15歳のときに終戦を迎えた。保険会社、紡績工場に勤務した後、25歳のときにサンコーIDへ。当時の社員は16人。当初はそろばんで財務計算をしていたが、やがて電卓、パソコンに変わった。パソコンの使い方を学んだのは70歳の手前だ。「新しいことへの挑戦はワクワクし」全く苦にならなかった。会社の発展とともに、自身も成長できたという充実感と会社への感謝がある。
毎朝5時半に起床してからヨガに30分ほど費やし、お経を3回唱える。妹と暮らす大阪府豊中市の自宅からバス、地下鉄、徒歩で通勤。勤務後、社員が皆、社内にいなくなるまで残って戸締まりをするのが日課だ。「仕事は生活のリズム」という言葉通り、規律ある暮らしの中の軸が会社だ。会社のクラブ活動や催しにも積極的に顔を出す。
定年なしの親会社で再雇用
そんな“スーパーおばあちゃん”を会社はどう支えているのか。
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