単身者所得6割は公的年金
さらに、高齢の親と中高年の独身の子供が同居する「1人親未婚子世帯の貧困率も上昇している」(阿部教授)という。80代の老親が50代で引きこもりの子供の面倒を見るいわゆる「8050問題」もその一つ。高齢の親の収入の頼りは年金になるだけに、貧困化の恐れは小さくない。
高齢者貧困増加の要因の2つ目は、高齢女性の貧困化だ。
千葉県西部に住む高田美代子さん(仮名、79歳)は、60歳で離婚した。40代の息子と娘はとうに独立し、一人暮らしを長く続けている。高田さんもまた月10万円ほどの年金で細々と生活をしている。長く働いてきたことで厚生年金があり、この額になっているが、2Kの団地の家賃は月4万円。残りは6万円で、「孫にお年玉をあげたり、冠婚葬祭など何かあったりするとすぐ赤字になる」と嘆く。
働いていた頃の貯金を少しずつ取り崩してやりくりしてきたが、それもあと数百万円。「これがなくなったら生活保護を受けるかなと考えることもあるけど、(申請時に)子供や親類に言われるのも嫌だから何とか頑張るしかない」と顔を曇らせる。
阿部教授によると、高齢女性の相対的貧困率は18年で22.9%と、高齢男性より約6.6ポイントも高い。それは当然ながら、高齢者の世帯タイプ別所得にはっきりと表れている。
単身男性のうち、年収200万円未満の層は19年で50.5%なのに対し、単身女性は68.8%に上った。どちらも夫婦世帯(13.4%)よりかなり高いが、単身女性の所得の少なさは目立っている。
単身者全体の所得のうち、公的年金の占める比率は64.3%、夫婦世帯も56.7%で圧倒的に多い。ただし、公的年金額は05年から19年まで単身者の場合、ほぼ横ばいで、夫婦世帯では259.2万円から242.5万円へやや減っている。公的年金は生活を支える力を徐々に弱めており、今後、さらに公的年金が減っていけば、単身女性を中心に生活が厳しくなる恐れは大きくなるだろう。
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