人はどうせ変わる。それが希望になる
最後に、今すごく苦しくて、死んでしまいたいと思っている子どもたちに、先生から何か伝えるとしたら、どんな言葉になりますか。
養老:どうせ自分は変わるよ、ということです。
どうせ自分は変わる?
養老:変わる。変わるに決まっているんですよ。今の状況が永久に続くってことはあり得ないので。今の状況が続かないと考えるときに、つい「周りが変わる」と思っちゃうんだけど、そうじゃないんです。「感じている自分」が、変わるんです。
「今、死にたいと思っている自分」が。
養老:変わる。変わるに決まっている。ですから、「今現在の自分」を、絶対視しない。これは当たり前のことなんですけどね。大人がそれを教えないといけないんです。僕なんか84歳までにどれだけ変わったか。
それを妨害するのが、「個性」とか「自己」を重視する今の風潮です。その人らしさとかね。いくらその人らしくしてみたところで、いずれ変わっちゃうんだから。らしくなくなっちゃっても、別にいいんですよ。
先日おっしゃっていた、「自己なんて本当はないんだ」ということを、子どもに教えるということですか。
養老:そうです。かなり乱暴ですけどね。でもお坊さんに聞いたら、みんなそう言うと思います。仏教は昔から「我というのを避ける」ということを言っていますから。
できるだけ自分が自分であるようにする、自分に素直であるようにするということを、「わがまま」っていうんです。「我がまま」ですから。
「わがまま」って、「私のまま」「自分そのまま」ということだったんですね。
養老:日本人の社会は、それを注意してきたんですよ。「我がまま」では駄目だと。
自分が変わるのが当たり前なんだから、自分が自分らしくあるなんてことはあり得ない。そして今の苦しみも続かないと。
養老:そうです。必ず変わるんですよ。
(完)
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