畑にいれば、発達障害は「障害」にならない
発達障害に農業ですか。
養老:「畑に連れていってしまえば、多動もくそもないよ」といっていました。結局、置かれた状況次第なんですね。教室のなかだと多動が目立つけど、畑だったら全然目立たない。
もしかすると、今も昔もADHDの子のパーセンテージは同じで、今の社会では目立つようになっているだけかもしれないということですね。日本で初めてADHD専門外来を立ち上げた医師の岩波明先生も、仕事の管理化が進んだことと、発達障害に注目が集まることを関連付けていました(「発達障害は病気ではなく『脳の個性』 治すべきものではない」)。
養老:田舎で育って、畑にいたら誰も気にしなかったのが、「きちんとしなさい」と座らせようとするから気になる。それができないからって、別に異常なわけではないですよ。
実際そういうふうに「ちゃんとしろ、座っていろ、きちんとしろ」といわれた子たちが、いわゆる二次障害(*)でうつを引き起こしたりしているんですね。うつから自殺という流れもあると思うんです。
養老:僕の知り合いは、もう学校に行かないと決めた子を預かっているんです。それを教育委員会が認めてくれて、所属していた学校に通っていることにしてくれています。でも、していることは農作業です。動物の世話なんかもいいと思いますけどね。
「なんとかなる」というNPOもあります。僕はここの特別顧問をしているのですが、少年院を出た子たちを預かっているんです。親代わりに預かるところが必要なんですね。鳶(とび)の会社の社長さんが運営しています。でもね、今まで50人くらい預かったけど、なかなかうまくいかないといっていました。
子どもたちを社会に適応させてくのって、大変なんです。まず預かって、身元を保証して、その上で社会適応させていくというのが。「最大の障害は何ですか?」と聞いたら、「スマホだ」と。
スマホですか?
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