解剖学者の養老孟司先生の「子どもが自殺するような社会でいいのか?」という問題提起からスタートした本連載。なぜ今、子どもたちは死にたくなってしまうのか。社会をどう変えていけばいいのか。課題を一つずつ、ひもといていく。

 「脳化社会」とも呼ぶべき、今の情報化社会において、子どもがノイズ扱いされていることを、前回指摘した。しかし、情報化社会においてノイズとなり、排除されるのは、子どもだけではないという。

(取材・構成/黒坂真由子)

養老孟司氏(以下、養老):ノイズ扱いされているのは、子どもだけではありません。大人も同じです。情報化社会では、「身体」はすべてノイズなんです。そして身体だけでなく、「変化するものはすべてノイズ」とみなす社会に、私たちは生きているのです。

「変化するものがノイズ」? それは、どういうことでしょうか。

養老孟司(ようろう・たけし)
養老孟司(ようろう・たけし)
1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。解剖学者。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。81年、東京大学医学部教授に就任し、95年退官。『からだの見方』(筑摩書房、サントリー学芸賞受賞)、『唯脳論』(ちくま学芸文庫)、『バカの壁』(新潮新書)など著書多数。大の虫好き。

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