本ケースでは、どうすればよかったのか
会社は、マイナス情報が上がらない理由をなくし、適切な対応ができる組織を作っていく必要がある。本ケースで扱った部門内での報復人事のような事象については、どう対応していけばよいのだろうか。
答えとしては、社長や関連部署の人は、この報復人事を絶対に許容してはいけないのである。もし、これを放置してしまえば、トップのもとにはマイナス情報は今まで以上に上がってこなくなるし、さらには、社長自身の信頼にも関わる。
本ケースのような場合、部門の責任者に報復人事について問いただしても、それっぽい理由をそれなりに説明するだろう。しかし、もしこれが本当に報復人事だと判断するのであれば、このような経営幹部は重要な職責を執行するスキルも資質もないと判断して差し支えない。よって、その職責から外さなければならないのである。このような人事を断行すると、部門間の大きなあつれきや、権力闘争のような事態が起こるかもしれないが、社外取締役などの支援も得て、やりぬかなくてはならない。
このような意思決定は「言うは易く行うは難し」の典型であり、実際にはそう簡単には実現できない。しかしながら、そのように難しいからこそ、実現できた会社にはレジリエンスと競争優位性が宿るのである。情報が上がってくる組織文化の形成は、情報を上げた人を優遇し、それを疎外する者を外すことによってしか達成できない。
※監修 浅見隆行弁護士(アサミ経営法律事務所)
[Human Capital Online 2022年10月4日掲載]情報は掲載時点のものです。
人事リーダーのための専門メディア「Human Capital Online」

Human Capital Onlineは「人的資本」の価値向上を目指し、人材戦略と組織開発に取り組む人事リーダーのためのメディアです。先進企業の戦略が分かるCHRO(最高人事責任者)インタビュー、HRテクノロジーや雇用のファクトを解説する連載、DX人材育成など、日本企業人事変革の最前線をお伝えします。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「「当たり前」を疑え!ケースで学ぶコンプライアンス」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?