本ケースでは、どうすればよかったのか

 会社は、マイナス情報が上がらない理由をなくし、適切な対応ができる組織を作っていく必要がある。本ケースで扱った部門内での報復人事のような事象については、どう対応していけばよいのだろうか。

 答えとしては、社長や関連部署の人は、この報復人事を絶対に許容してはいけないのである。もし、これを放置してしまえば、トップのもとにはマイナス情報は今まで以上に上がってこなくなるし、さらには、社長自身の信頼にも関わる。

 本ケースのような場合、部門の責任者に報復人事について問いただしても、それっぽい理由をそれなりに説明するだろう。しかし、もしこれが本当に報復人事だと判断するのであれば、このような経営幹部は重要な職責を執行するスキルも資質もないと判断して差し支えない。よって、その職責から外さなければならないのである。このような人事を断行すると、部門間の大きなあつれきや、権力闘争のような事態が起こるかもしれないが、社外取締役などの支援も得て、やりぬかなくてはならない。

 このような意思決定は「言うは易く行うは難し」の典型であり、実際にはそう簡単には実現できない。しかしながら、そのように難しいからこそ、実現できた会社にはレジリエンスと競争優位性が宿るのである。情報が上がってくる組織文化の形成は、情報を上げた人を優遇し、それを疎外する者を外すことによってしか達成できない。

※監修 浅見隆行弁護士(アサミ経営法律事務所)

[Human Capital Online 2022年10月4日掲載]情報は掲載時点のものです。

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