組織の新陳代謝が大切
これまで見てきたように、本ケースの顧問の行動がコンプライアンス問題かといわれると、コンプライアンス問題にはならない可能性が高い。しかしながら、組織としてこのような状況を放置しておいてよいかというとこれはまったくの別問題である。
先述したように、長老の顧問には長老としての高い見識があり、それを経営に生かさない手はない。しかしながら、過去の情実にとらわれ、時代や技術の変化を認識せず、社会や消費者の最新動向を理解していないことも多い(もちろん人による)。かつての上司部下であった関係をもとに、職制上の意思決定者である社長や役員に対して、本来、出せる筋合いのない指示のようなものを出そうとする顧問もいるだろう。先輩の意見は断りづらいといって、これらの状況を容認してしまえば、会社自体が確実に時代の変化から取り残される。
したがって、職制上の意思決定者は、自分に求められる責任と権限をしっかりと認識し、たとえ以前の上司であっても、あるいは、たとえ結婚式の仲人をしてもらった私生活上の恩人であっても、顧問の意見はあくまで参考意見として聞くにとどめ、自ら意思決定を行わなくてはならない。それをサボるということは、すなわち役員や経営幹部としての善管注意義務を果たしていないことになる。善管注意義務は経営幹部や管理職の基本中の基本である。もし、それを果たせず、長老の言いなりになるような状況を続けるのであれば、それこそ重大な任務懈怠(乱暴に言うと“さぼり”)であり、自らその立場を降りるべきであろう。
※監修 浅見隆行弁護士(アサミ経営法律事務所)
[Human Capital Online 2022年9月14日掲載]情報は掲載時点のものです。
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