本ケースにおけるコンプライアンス上の問題とは?

 長年、多くの会社のリスクマネジメントを見てきて、最も危ないと感じさせられる行為の一つが、景品表示法における不当表示と呼ばれる法令違反である。

 本社のマーケティング部や販促セクションでは、法令をきっちりと守った方法で広告を制作し、その使用法についてのガイドラインを明確に示しているにもかかわらず、顧客接点の店舗や営業担当者たちは、それを完全に無視し、実態をはるかに超えて優れた商品のように誤解すべく書かれたパンフレットやチラシ、提案資料をお客様に渡しているのである。

 消費者庁のホームページでは、不当表示として3つの例を挙げている。

1 優良誤認表示
(1)内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
(2)内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示

2 有利誤認表示
(1)取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
(2)取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

3 その他誤認される表示
商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示

 原材料に果汁等が全く使用されていないことが明瞭に記載されていない清涼飲料水、その不動産物件が存在せず、実際には取引することができない不動産についての表示(いわゆる「おとり広告」)

 ちなみに本ケースは、価格や取引条件が実際よりも著しく有利なものと消費者に誤認させようとしている有利誤認表示になりうるものである。

 また、不当表示に関連する事項として、このような表示が問題になるのが、テレビ広告や大型のポスターなど派手なものだけで、チラシやパンフレットなどの細かいものは対象外と決めつけて(佐藤店長のように)問題行為を遂行する人がいることがあるのだが、それは間違いである。

 不当表示が行われる対象には、チラシ、パンフレット、カタログ、ダイレクトメール、容器、パッケージ、ディスプレー(陳列)、ポスター、看板、インターネット広告、セールストーク(訪問、電話)など、あらゆる媒体が想定されており、本ケースのように「地域のチラシだから大丈夫」といった考え方は正しくない。

 問題行為を遂行し、もし景品表示法の違反行為が認められることになった場合は、消費者庁は事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を出す。またその場合、消費者庁は当該事業者に対し、課徴金の納付を命じる(課徴金納付命令)。過去の事例では、不当表示の期間の売り上げの3%に相当する総額数億円を超える課徴金を支払った企業もあり、さらに、それらの情報は消費者庁のホームページ等で公表され、一般にも報道されるので、会社のブランドを大きく棄損するのである。

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