少子高齢化で市場の拡大が期待できない現在、どこの企業も販促活動に知恵を絞っている。その際、過去に成功した手法が今では違法行為になる可能性があることに留意すべきだ。今回は、景品表示法におけるコンプライアンス問題を考えてみよう。
(写真:123RF)
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 以下は、とある成長企業の店舗における店長と部下の会話である。

佐藤店長 チラシ広告に使うコピー考えた?

田中 はい。これでどうでしょうか。

佐藤店長 これでは弱い! 「会員になれば全商品半額」とか、どーんと大きく書こうよ。

田中 と申されましても……。今回のプロモーションで半額になる商品の販売総数はトータルで見て、よくて半分くらいではないかと思います。新作はプロモーション対象外ですし、定番品も対象外ですから……。品数でいえば4分の3くらいにはなりますけども。それでも全商品ではありません。

佐藤店長 しかしなあ。強いメッセージがないと会員の獲得目標に届かないだろう。そういえば「会員になれば半額」をうたったプロモーションは前にもやったことがあるぞ。そのときも今回と同じように実際には半分くらいしか半額商品はなかったけれども、何の問題にもならなかった。

田中 店長、そのプロモーションはいつ頃のことでしょう。

佐藤店長 私が中途入社してきてすぐだから、10年前くらいかな。

田中 10年前っていうと、まだ景品表示法の不当表示に関するところが改正される前ですね。

佐藤店長 なに? 法律が変わったの?

田中 たしか。ホテルが提供するメニューの表記の問題が社会的に大問題となり、法律も改正されて監視が厳しくなったんですよ。

佐藤店長 あ、「なんとかエビ」の食品偽装事件か。

田中 はい、そうです。それに、当時はうちの会社も今ほど有名じゃなかったのではないでしょうか。世の中の状況やうちの会社の社会的地位が10年前とはずいぶん違うように思います。

佐藤店長 うーん、困った。でも、もう時間もあまりないし。会員の獲得目標を外すと本社からにらまれる。どうにか良いアイデアを考えてくれよ。

田中 そうは申されても……。逆に、全商品を本当に半額にするように変えてみてはどうですか?

佐藤店長 アホか。個店の方から本社にそんなことを提案できるわけないだろ。まあ、とにかく考えろ。で、良いのが思いつかなければ「会員になれば全員半額」と書け!

田中 ……真面目におっしゃられてます?

佐藤店長 うちくらいの会社は、このくらいやっても問題になんかならない! さっきのホテルが問題になったのはみんな超有名大企業の所有するホテルだったからだ。それに、これはテレビ広告とかじゃなく、街で配る単なるチラシなんだから、お上だってこんな細かいことを問題になんかしないだろう。

田中 ……。

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