下請け会社との関係についての基本的な姿勢を習得する

 下請法に関連して社員が気を付けなければいけないことは、ここまで見たように(A)「何が下請法に抵触する行為かを知る」ことであり、(B)「下請け会社との関係についての基本的な姿勢を習得する」ことである。

 (A)についてはすでに述べたので、ここでは(B)下請け会社との関係についての基本的な姿勢について語っておきたい。基本的には、以下の3つのことを理解しておきたい。

(1)下請け会社は、パートナーであって“しもべ”ではない
(2)下請け会社は、発注元の依頼をそう簡単には断れない
(3)良い下請け企業を獲得維持するには、金払いがよく筋を通すことが一番重要である

(1)下請け会社は、パートナーであって“しもべ”ではない

 下請け会社への違法行為が発生する背景には、発注元が偉くて下請け企業は“しもべ”だと思っている人がいることがある。本ケースの場合も、ニコニコ物産に対して、自分勝手に発注した金額を下げようとしている。

 相手企業をパートナーだと思っていれば、このような横暴なことは思いもつかないが、下請け会社がこちらの思うままに動かせる相手であり、そうしても問題ないと思っているがゆえに、このような無茶な施策を思いつく人が出てくるのである。まずは、社員全員の基本スタンスを変えなければならない。

(2)下請け会社は、発注元の依頼をそう簡単には断れない

 本ケースにおいて、ニコニコ物産はこの無理な依頼に応諾するであろうか。その答えは知る由もないが、下請け会社はよほどのことがない限り、発注元(大手であればあるほど)からの依頼を断ることはしない。断って取引がなくなってしまうと困るからである。場合によっては、断ったことから嫌がらせを受け一切の取引が失われて事業継続の危機に陥るかもしれない。

 よって、下請け会社はかなりの無理難題でも応諾してくれる可能性が高いのである。そこにつけ込んで、無茶な取引を成立させたり、あるいは発注後に契約の内容を変更しようとすると、その時はできるかもしれないが、その行為をしたという情報は必ず業界内外に流出し、会社の評判を大きく低下させる。そして、だんだん良い取引先が去っていく。

(3)良い下請け企業を獲得するには、金払いがよく筋を通すことが一番重要である

 以上の(1)(2)のようなことから、良い取引先、良い下請け会社と取引を続けるためには、発注時には厳しい要求はしたとしても、取引上の筋は通し、発注書もしっかりと書き、こちらに非があるときは謝り、約束通りにキッチリとお金を支払うことが重要である。

 本ケースのような状況では、ニコニコ物産への無理な要求を本社が把握することで、事業部に対して懲戒処分が下される可能性は高い。事業部にとっては利益目標を達成することは重要かもしれないが、会社全体の観点からは下請法の違反行為をされることのダメージの方がもっと重要だからだ。結局、短期視点での独りよがりな意思決定をすると、最終的には誰にとっても良いことにはならない。

 私は、これまで本ケースのような場面で不覚にもゴーサインを出してしまった人の後悔の念を一度ならず聞いたことがある。業績の不振はその後に取り返せるが、コンプライアンス問題を起こした当事者になってしまうと、いろんな意味でその後のビジネスパーソン生活は厳しくなってしまう。会社や周囲の状況はいろいろあって、厳しい局面に追い込まれることもあるだろうが、つまるところ、家族に説明できないような行為はしない方が良いということである。

※監修 浅見隆行弁護士(アサミ経営法律事務所)

[Human Capital Online 2022年2月15日掲載]情報は掲載時点のものです。

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