本件のコンプライアンス的問題とは?

 これと同様の会話をした経験のある人は、かなりたくさんおられるはずだ。下請法は1956年に制定された古い法律だが、取り締まりが厳しくなったのは、平成後期くらいからで、その昔は期末になったら下請け業者には泣いてもらって、その代わり翌期にお返しの発注をして、今期の利益目標を達成するというのが習慣になっている会社も普通にあった。したがって、状況が厳しいときに、本ケースのような取引をしようとする企業が出てもおかしくない。

 さて、本件だが、ニコニコ物産から了解が得られたうえで発注金額を減額したとしても、下請法違反[注]になる。親事業者(発注者)が下請け事業者に責任がないのに、発注の取り消し若しくは発注内容の変更を行い、又は受領後にやり直しをさせることにより、下請け事業者の利益を不当に害すると下請法違反と見なされるのである。このときは、たとえ下請け事業者の了解を得ていても、また親事業者に違法性の意識がなくても、違法となるので十分注意しておかなければならない。

[注]なお、取引の内容および発注者側と受注者側の資本金の大きさにより、下請法が適用されるかどうかが決定する。詳細は公正取引委員会のホームページ(https://www.jftc.go.jp/shitauke/)を参照のこと

 なお、下請法において親事業者(発注側)には、下記のように4つの義務と11項目の禁止事項が課せられている。これについては社内での周知徹底が必要である。

親事業者の義務(出所:公正取引委員会ホームーページ)
義務面積 概要
書面の交付義務 発注の際は直ちに3条書面*を交付すること
支払期日を定める義務 下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること
書類の作成・保存義務 下請取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存すること
遅延利息の支払義務 支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと
* 3条書面とは下請法3条に定められている書面(発注書)。記載すべき具体的な12の事項が定められている


親事業者の禁止行為(出所:公正取引委員会ホームーページ)
禁止事項 概要
受領拒否(第1項第1号) 注文した物品等の受領を拒むこと
下請代金の支払遅延(第1項第2号) 下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと
下請代金の減額(第1項第3号) あらかじめ定めた下請代金を減額すること
返品(第1項第4号) 受け取った物を返品すること
買いたたき(第1項第5号) 類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請け代金を不当に定めること
購入・利用強制(第1項第6号) 親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること
報復措置(第1項第7号) 下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること
有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号) 有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること
割引困難な手形の交付(第2項第2号) 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること
不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号) 下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4号) 費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること


 例えば、令和2年度において公正取引委員会中部事務所管内で発生した下請法の違反事例は約1700件だった。多い方から(1)発注書面の不交付・記載不備(725件)、(2)支払い遅延(362件)、(3)減額(231件)、(4) 買いたたき(144件)、(5)不当な経済上の利益の提供要請 (52件)、(6)割引困難な手形の交付(41件)――となっている。まずは、しっかりと発注書面(3条書面)を作成するところから始めることが必要であろう。

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