情報リテラシーを高めるための教育が必要

 会社としては、社員や元社員が口コミサイト等で発言することを徹底的に制限したいと考えるかもしれないが、無理矢理に抑え込もうとしても発言そのものは防げない。憲法で保障された表現の自由(検閲を受けることなく自身の思想・良心を表明する自由を指す)に抵触するからである。

 さらに、このような口コミサイトも、これまで内部に閉じていた情報が外部に出ていくことで隠されていた問題が明らかになり、それによって、問題の健全化が行われる契機にもなりえる。前向きに考えれば、このようなサイトの存在も、そこに何かを書き込みたいとする個人の存在も、会社の発展に寄与するとポジティブに評価できるところはある。

 しかしながら、情報の出し手である個人が匿名であることから、書き込みに対して注意が行き渡らず、内容に不適切なもの(間違った情報、秘密情報、名誉棄損の情報)が交ざり、会社に対して与えるべきでない損害を与える可能性が高くなっていることは、個人としても、会社としても注意しておくべき重要な問題でもある。

 これだけ情報化社会になりながらも、何が公開してよく何が公開してはいけない情報か、この情報はいつからオープンにしてよいか、どの範囲に対して公開してもよいかなどの情報のハンドリングについての個人の能力が、あまり上がっていないのである。

 SNS上の投稿などを見ていても「今日は○○の会社に来ています」「今日は○○に出張で来て、○○のような進展がありました」などと、取引先や顧客先などの情報を当たり前のように公開している人がいる。「どこの会社と取引しているか」ですら、重要な機密情報になりえるのだが、そのようなことを考えたこともなければ、適切な指導を会社から受けたこともないのであろう。

 口コミサイトに困った情報を投稿されてオロオロする前に、会社は投稿されたら困るような事象をなくすことが重要である。さらには、虚偽の情報や機密情報をオープンな場所に平気で投稿してしまうような社員をなくすべく、情報リテラシーの向上の教育に力を入れる必要があるだろう。結果的に口コミサイトなどへの不適切な投稿の減少にも寄与すると思われる。

※監修 浅見隆行弁護士(アサミ経営法律事務所)

[Human Capital Online 2022年1月18日掲載]情報は掲載時点のものです。

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