
最近、国家公務員への接待問題に関する報道をたくさん見るようになった。コンプライアンスの事件が発生すると、いつもなら「やばい! うちも危ないかも」といった反応をする企業人が多いのだが、今回は少し反応が異なる。「えー、接待しても捕まらないの? うちもやってみようかな」である。
以下は、同年代の営業1課長と営業2課長の会話である。
高橋営業1課長 最近、国家公務員の接待関連のニュースが増えているよね。
佐藤営業2課長 ええ。ちょっとびっくり。
高橋 役人を相手に堂々と接待してたわけでしょ。これって許されるのかな。
佐藤 許されないでしょ。相手は所管の部局の人だから完璧な「利害関係者」だし。
高橋 ちょっと想像できないね。
佐藤 われわれは、会社から「公務員との付き合いには注意しろ」「絶対に食事に行くな」とずっと聞かされてきたし。
高橋 いつの間にかルールが緩くなってきたのかな?
佐藤 一説によると、官界と経済界との間にあまりに厳しい線を引きすぎたために、互いに良いコミュニケーションができなくなり、これでは良い行政ができないということで、昔よりはかなり緩やかになったとか。
高橋 まあ一理はあるけど。それなら会議室で普通に話をすればいいだけだよな。わざわざ、食事を一緒にする必要などないし。
佐藤 そうだよね。何も困ることはないはず。ただ、やっぱり一緒に酒を飲まないと、まともな話はできないという人もいるようで。
高橋 まあ、それもわからなくもないけれど、酒を飲まないと話せない話というのがそもそも問題ありでしょう。
佐藤 昭和の価値観だからね。偉い人たちは。
高橋 で、結局、接待を受けた人はどうなるの?
佐藤 状況によるけど、国家公務員倫理法の下に定める倫理規程にひっかかって、減給の処分を受けたり、結局、辞めざるをえなくなったり。
高橋 で、接待したほうは?
佐藤 どうなんでしょ。贈収賄で問題にならない限り、とくに罰則はないのじゃなかったっけ。ニュースだと会社が社内のルールにのっとって減給処分に処したとあるけども。
高橋 え、そんなもので済むの? それなら大きな案件を取るためなら接待したほうがいいんじゃない? やっぱり人間っておごってもらうと何らかの形で恩を返そうとするからね。
佐藤 おっ。それは「返報性の原理」ね。心理学で勉強したよ。
高橋 そう。
佐藤 でもマスコミに報道されたら社会的な制裁は受けるけどね。
高橋 報道されたらね。…でも、だいたい報道されるのは、政治家がらみの案件だけじゃない?
佐藤 確かに。…ということは、やったもん勝ちか。
高橋 昔ほど、社会的制約や監視がそれほど厳しくないのなら、やっても良いのでは…
佐藤 ……
高橋 …いやいや、うちの監督官庁のお役人は襟を正した付き合いが好きだから、やめておこう。あやうく余計なことを考えるところだった。
佐藤 あ。…そうね。やめとこう、やめとこう。
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