本ケースにおけるコンプライアンス問題とは?

 本ケースを読まれた読者の方の反応は大きく分けて2つに分かれるのではないかと思う。一つは「まあ、普通の会議だな」で、もう一つは「女性蔑視のなんてひどい会議だ」と思われる方である。

 実は、この会議の内容は、日経BP社から2021年6月に発刊になった『早く絶版になってほしい#駄言辞典』(日経xwoman 編)の中から、男性が発する、女性についての無意識な思い込みから来る言葉を利用して、よくある会議を再構成してみたものである。したがって、無意識の思い込みに対して無自覚であれば「普通の会議」という風に思えるであろうし、自覚的であれば「ひどくゆがんだ会議」だというように読める内容になっている。

 では、「アンコンシャスバイアス」に相当する言葉(=駄言)について少し解説してみよう。

駄言(1) 営業マン
うちの会社の提案書にはいまだに営業マンという言葉が入っていたり、社内のメールでも営業マンと書かれていたり。女性の営業いますけど?? 
(駄言辞典88ページ)

 その昔はどこの会社でも営業といえば男の役割で「営業マン」という言葉が一般的だった。しかし、状況は変わっている。最近は営業パーソンといったりもするが、ちょっと言いづらいので、いまだに「営業マン」を使っている会社もある。会社としては、「営業担当者ランキング」と変えているのに、幹部は昔ながらの「営業マンランキング」と無意識に言ってしまっている可能性もかなりある。

駄言(2) リケジョ
そんなカテゴライズされないでも男子も女子も好きな勉強ができますように。
(駄言辞典42ページ)

 別にわざわざ「リケジョ」などと言う必要はないのだけれども、数字を使った緻密な営業をすることの理由として、学習歴を強調してしまっている。これも「女性はロジカルな営業はしないだろう」といった固定的なイメージがあるからだと推測される。

駄言(3) 女性ならではの細かい心配り(駄言辞典 31ページ)

 細かい心配りができるのは女性だからなのか、鈴木さんだからなのか。この特性は、性差に由来するものなのか、個体に由来するものなのか。このあたりは難しいところでもある。伊藤部長は、この特性を鈴木さんの特性として個体認識しているのだけれども、他者にこのような話をするときには、“つい” 女性ならでは、とか、“女性らしさ” といった言葉を使ってしまうのである。“つい”というのは、無意識だが実際にはそのように考えているからかもしれないし、聞き手の抱くステレオタイプに合わせることで、より伝わりやすくするために使ったのかもしれないのだが。いずれにせよ、あまり深い意図なく “つい”使われてしまうのである。

駄言(4) 結婚したら、仕事やめるんでしょ?(駄言辞典 62ページ)
駄言(5) そんなに早く復帰するなんて、赤ちゃんがかわいそうだよね(駄言辞典 135ページ)

 本ケースでは、類似の内容として、「結婚されてましたっけ?」「しばらくしたら、子どもさんが生まれるかもね。そうしたら、課長職を続けられるのかな?」という設定にした。実際の昇格会議などで、このような議論は実際になされる(会社はある)。子育てと課長職の両立が可能かどうか、現実的な問題として考えておいた方が良いというのである。しかしながら、これが男性の場合だったら、このような話題が出ることはまずない。

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