
世の中には、男女の性的役割がいまだに強く固定化されてるかのような発言をする偉い人がいる。そのたびに騒動になり、いわゆる炎上状態になる。「ちょっと時代錯誤じゃない?」などと思って見ている私たちも実際には、普段使っている言葉、習慣として根付いた行動パターンなどによって、バイアスから逃れられない状況にある。
以下は、ある企業の「課長昇格会議」の内容である。ちなみに参加者は全員男性だ。
田中人事部長(進行役):はい。では佐藤さんは昇格ということで、次に鈴木和子さんに移ります。では、推薦者である伊藤営業部長お願いします。
伊藤営業部長:はい。鈴木さんは全国営業マンランキングにおいても、6回連続でベスト10に入っています。大学時代は、バイオを研究してきたリケジョで、数字をもとにした緻密でロジカルな提案が顧客から大変大きな支持を受けています。一方で課内の若手メンバーに対しては、女性ならではの細かい心配りで、その成長をサポートしています。課長の任は問題なく果たせると考えます。ぜひ、ご審議ください。
高橋総務部長:確かに。素晴らしいですね。ところで、鈴木さんは結婚されてましたっけ?
伊藤営業部長;はい。2年前にたしか学生時代の同級生と結婚したと思います。
高橋総務部長:しばらくしたら、子どもさんが生まれるかもね。そうしたら、課長職を続けられるのかな? 当人は課長をやりたいと思っているの?
伊藤営業部長:それは直接聞いたことはありませんが、やる気はあると思います。
渡部財務部長:鈴木さんは、女性活躍推進を掲げる当社の看板になれる逸材だと思いますよ。
小林管理担当役員:確かに。ただ一般的に、女性社員って、若いうちはすごく優秀で仕事できるのに、中堅以降になると子育てとかで減速して男性に抜かれるんだよね。だから、若いうちに優秀でも女性は登用しにくい。
田中人事部長:そういう面はあるかもしれませんね。話を鈴木さんに絞りましょう。条件的に見るならば、十分に課長昇格の条件は満たしているように思われますがいかがですか?
高橋総務部長:人事部としても女性管理職比率を上げたいんでしょ。
田中人事部長:鈴木さんの審議とは直接関係ありませんが、皆さんもご存じの通り、当社の女性管理職比率は10%をやっと超えたところです。政府の目標は30%ですので、経済界の集まりでこの話題になったときには、社長はいつも黙り込んで話が終わるのを待っている状態です。
小林管理担当役員:あらまあ。それなら鈴木さんには課長としてバリバリ頑張ってもらいましょうよ。子どもが生まれたら、旦那さんには主夫になってもらって。
一同:ははは。
伊藤営業部長:ありがとうございます。鈴木さんには、営業三課の課長として次年度から活躍してもらおうと思います。
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