ITリテラシーを向上させる施策も必要

 かつて、重要な地位にある人が、私用のパソコンの画面を撮って流したところ、アダルトサイトにブックマークしていることがわかり大きな話題になったことがある。ほかによくある事例としては、デスクトップに取引先の名前とプロジェクト名が書かれたファイルが置いてあり、それを外部の人が知ることになって問題になるといったことがある。これらの事象は、ITリテラシーの低い中高年が起こすことが多い問題であり、リモートワークを進めるにあたっては従業員のITリテラシーを向上させるための施策も併せて進めなくてはならない。

 発言が切り取られて拡散されることも大問題になりうる。以前から、要人の発言の一部だけが切り取られ、本来の趣旨とは違うところで批判を浴びることが、社会的な問題となっていた。当人としては単なる冗談のつもりであったり、極端な例示のつもりであったりするに過ぎないものが、もともとの文脈は完全に無視されたところで問題となり、最終的に、辞任等の社会的制裁を受けなければならないところまで追い込まれるのである。

 とはいえ、このような立場の人は、そのようなことに対してもある程度の覚悟はできているはずだ。問題は、同様のことが一般企業の普通の管理職にも起こりうるということである。これまでなら、その問題発言があった際に「ちょっと眉をひそめる」くらいで終わっていたことが、オンライン会議などで映像や音声が記録されることが増え、証拠として残ってしまう。そして、それが公開されてしまう。こうなると、当人に悪意はなくとも、会社は何らかの対応をせざるを得なくなり、当人にも想像を超えるような大きな被害がもたらされる。残念ながら、これらのリスクに対して、あまりにも無頓着な人が多い。

 私は仕事柄、上記のようなことに対して、いろいろな場面で注意喚起することが多い。そうすると「そういう堅苦しいことばかり言っているから、会社に閉塞感が生まれるのだ」と批判されることがある。確かに、そういうことを言いたくなる気持ちがわからぬではない。しかしながら、これに対しては「世の中の常識とルールが変わったのだから、新しい常識とルールに合わせてください」と申し上げるしかない。

[Human Capital Online 2021年7月16日掲載]情報は掲載時点のものです。

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