
早いもので、テレワークが定着して1年以上たつ。それとともに、テレワークならではのコンプライアンス問題というものも顕在化してきた。互いの顔が見えないということ、公私の区別がつけにくいことなどから意図せずハラスメントや自身の信用を落とすような行為をしてしまいかねないのである。
鈴木 わー、久しぶり。生で顔を合わせるのは、半年以上ぶりですね。
佐藤 ほんとです。朝から晩までオンライン会議ばかりで疲れますね。中間管理職はほんとにつらいです。
鈴木 まったくです。ところで、ちょっとあまり大きな声ではいえないのですが、田中課長がハラスメントの騒ぎに巻き込まれているって知っています?
佐藤 え? また、なんでそんなことになったのですか。
鈴木 きちんと納期を守らない部下がいて、それでは困るからといって仕事の進捗状況を毎日30分ごとに報告させたらしいんです。
佐藤 几帳面な田中課長らしいとは思うけども、ちょっとやりすぎじゃない。
鈴木 たしかに。オフィスに居てくれれば、雰囲気から状況はわかるのですが、リモートだと仕事を真面目にしているか不安になりますものね。気持ちはわからなくはないのですが。
佐藤 で、これがパワハラになりえるんですか?
鈴木 なる可能性があるらしいんです。
佐藤 え。マジですか。じゃあ、会社のチャットツールには「何時であっても間髪いれずにすぐに反応しろ!」とか言うのもまずいですね……ちょっとまずいかも。それ以外に気をつけておくことありますか?
鈴木 オンラインで操作しているときに間違って変なものを映してしまうのも、気をつけておかないといけません。エッチなものを映したら環境型セクハラと言われます。
佐藤 あ、それ聞いたことある。大学の先生が授業のときに変な画像を流しちゃったやつでしょ。
鈴木 そうです。同じような話ですが、画面共有するときにデスクトップの画面が映るので、そのときにまずいファイル名が映ることもあります。デスクトップはキレイにしておかないといけません。
佐藤 まじ、あぶないかも。顧客名やプロジェクト名がわかるファイルがデスクトップに置きっぱなしになってる。
鈴木 それは違法行為ではないですが、会社と個人の信頼問題になりえますね。あと、今ホットな話題は、発言の録画録音です。
佐藤 うっ…。
鈴木 バカな発言をしないことはもちろん重要なのですが、それ以外に、100%冗談で言った話がそこだけ切り取られて、問題視されることがあります。
佐藤 え…。実は、部下へのアドバイスをするとき「私の言った通りにやって成功したら、盆暮れにはちゃんと(黄金を下に隠した)菓子折りを持ってくるように。わっはっは」なんて、水戸黄門の悪代官みたいな冗談を言ってるんですけど、これはまずい?
鈴木 超まずいでしょ。それオンライン会議で言ってます?
佐藤 言ったかも…。
鈴木 それは、そもそも冗談と思われてないと思いますし、冗談と思われてたとしても録画されてネットにさらされたら佐藤さんの会社員人生は終わりますね。
佐藤 うわー。どうしたらいい?
鈴木 佐藤さん、昔から隙がありすぎますからね。もうちょっと社会の変化に敏感になったほうがよいと思いますよ。
佐藤 ……。
Powered by リゾーム?