憲政史上最も長く首相の座にあった安倍晋三元首相が国内外の政治情勢・経済政策についての持論や日本の目指すべき道を語るコラムがスタート。第1回では岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」への注文や新型コロナウイルス対策の見直しを提起した。

(写真:竹井 俊晴)
(写真:竹井 俊晴)

 岸田文雄政権が発足し、100日余りが経過しました。昨年10月の衆院選は多くのメディアの苦戦との予測を覆し、261議席を獲得して自民党が大勝しました。

 衆院選の直前というタイミングで自民党総裁選が行われ、私が支援した高市早苗さんが一定の得票を得て党の政調会長に就いたことで、保守浮動層をつなぎ留めることができたのが大きかった。その上で、立憲民主党と共産党が小選挙区の候補者の一本化を進めたことに対し保守浮動層が危機感を強め、自民党の議席獲得に結びついたのだと思います。

 今年の国内政治の焦点は、政局的には夏の参院選の行方です。通常国会が召集されましたが、この通常国会というのは常に予想もしないことが起こり得ますので、与党として緊張感を持って臨まなければなりません。

 岸田政権が参院選で先の衆院選の勢いを維持できるのかはまだ分かりません。まさにこれからの政権運営次第だと思います。

 政権運営のカギとなるのが、岸田さんが新たな経済政策として掲げる「新しい資本主義」の具体化でしょう。今の段階でこの新しい資本主義を理解している人はほとんどいないのではないでしょうか。

分かりにくい「新しい資本主義」

 岸田さんは「成長と分配の好循環を目指す」としていますが、そもそも分配には原資が必要で、そのためには成長しないといけません。政府として経済成長に対する強い意志を示し、成長に向けてどういった政策を行っていくのかというプランを提示していく必要があると思います。

 マクロ政策としては、経済を成長させるためには私の政権で進めてきた経済政策である「アベノミクス」以外にないと思います。大胆な金融政策、機動的な財政支出、そして規制緩和などを通じた成長戦略で経済を成長させていく。料理そのものを変えるというより味付けをどうするのかということなのかもしれませんが、岸田さんはこの基本軸を変えるべきではありません。

 私は経済分野で政治が果たすべき最も重要な役割は、雇用をつくり、守ることだと思っています。安倍政権では「官製春闘」と呼ばれたように賃上げにも注力しました。岸田政権も賃上げを分配政策の柱と位置づけて賃上げ企業への優遇税制の拡充などを打ち出していますが、物事には順番というものがあります。

 賃上げに一番大切なことは、まず企業が収益を上げることです。企業の業績が伸び、景気が良くなり、労働市場の需給がタイトにならない限り賃上げは進んでいきません。ですから、まずは政府として、企業が収益を上げることができるような環境を整えることが重要となります。

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