2022年4月に改正育児・介護休業法が施行され、企業による男性育休の周知・意向確認が「義務化」されました。中小企業も対応しなくてはなりませんが、現場からは戸惑いの声も聞かれます。中小企業2社の担当者が語る、男性育休についての課題や本音を紹介するとともに、企業向け研修などを手掛ける専門家に解決策を聞きました。

育児の大変さが伝わらない

 「正直、男性育休の『義務化』については、あまり知りませんでした」。関東地方の不動産会社、A工業(社員数約300人)の人事担当者は、2022年3月上旬の取材時にこう打ち明けた。

 「経営陣は男性ばかりで、妻が専業主婦という人が多く、育児の大変さが伝わりません。『男性には、育休を取るよりたくさん働いてほしい』『男性が育休を取れる会社にならなくても、全く困らない』というのが経営層の本音なんです」

 A工業の担当者は、今回の取材もきっかけとなり、「義務化」への対応準備を始めたという。まずは就業規則を一部改訂、男性育休についての記述を盛り込んだ。制度の周知や意向確認の義務については、「社員が見られるイントラネットに制度について掲載し、男性社員から配偶者の出産届が出されたら、個別に説明するつもりです。ただ、実際には男性社員が自分から『育休を取りたい』などと言い出せる雰囲気ではありません

 実はA工業では、男性社員が1週間程度の育休を取った前例があるという。対象となる社員に人事担当者から声をかけ、経営層には、国から助成金(両立支援等助成金)が出ることを伝え、「1週間だから業務に影響はない」と説得した。「でも、1週間では『育休』とは呼べませんよね。かといって数カ月単位の育休となると、実際にはかなり難しいと思います」

 中部地方のB建設(社員数約80人)では、男性が育休を取得した前例はない。「義務化」への準備は進めているが、「長期間の育休は、男性本人が希望しないでしょう」と、人事担当者は苦笑いする。

 「制度改定については、社会保険労務士からの情報提供や労働局のセミナーなどを通じて知っていました。会社と従業員との労使交渉の場を利用して、会社側と社員に同時に説明し、内容を議事録に残して回覧する予定です。取得のメリットを理解してもらうことが大事なので、子どもが生まれた社員には、社会保険などの手続き変更の際に、育休についても資料を渡して説明したいですね。該当者の直属の上司にも一言断ってから説明するつもりです」と、B建設の担当者は前向きに話す。

 「ただ、準備をしても、実際に男性本人が取得するかどうかは分からない」と担当者。人員不足や、収入・人事評価などへの不安が背景にあるという。

 2社に共通するのは、社内の雰囲気作り、代替要員の確保、賃金や評価への不安、といった課題だ。こうした課題を、中小企業はどのように乗り越えればいいだろうか。A工業、B建設の事例を基に、専門家にアドバイスを聞いた。

話を聞いた会社

■A工業(関東地方)
社員数…約300人
社員の男女比…6:4
管理職の女性比率…2%(役員は男性のみ)
社員の平均年齢…30代

■B建設(中部地方)
社員数…約80人
社員の男女比…7:1
管理職の女性比率…0%
社員の平均年齢…40代

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