部長や課長といった立場で部下やチームメンバーを率いる中間管理職。その多くはプレイングマネジャーとして担当案件を抱え、多忙を極めているのが実情だろう。そんな状況で成果を上げていくために必要なこと、それは自分が率いているチームを「自走する集団」に変えることだ。リーダーが手取り足取り指導せずとも自発的に行動し、成果を上げていくチーム。そんな理想的なチームをつくり上げていくためのノウハウを、組織開発の現場で奮闘する筆者が伝授する。
部下に対して「もっと高い目標に挑戦してほしいのに、無難にこなすことしか考えていないのではないか」と感じている上司は少なくないだろう。でも待ってほしい。「挑戦しない」部下をつくっているのは、実は自分かもしれないと考えたことは、あるだろうか?
この春、営業二課に赴任した今市課長は悩んでいた。
着任から数週間、部下たちの仕事ぶりを見てきたが、特に問題らしい問題はないように見える。営業二課は主に、ルート営業といわれる、既存顧客との取引を担当する部署だ。部下たちは皆、その環境で顧客訪問も商品提案もそつなくこなしている。「優等生」の集団だと言っても過言ではない。
ただ、今市課長にはその仕事ぶりがどうにも「引っかかる」。ルーティンワークを淡々とこなしている“だけ”なのではないかと感じられて仕方がないのだ。そうだとすれば、大きな失敗はないかもしれない。ただそれは見方を変えると、大きな飛躍は期待できそうにないとも言えるのだ。
部署の直近の業績は、ほぼ横ばいだった。しかしこのままの状態が続くと、良くて現状維持、将来的には下降線を描く可能性がないとは言えない。着任早々、不安を覚えた今市課長は、ミーティングで部下たちに発破をかけた。
今市:みんな、いつもとてもよくやってくれてありがとう。だけど、もう少し積極的にチャレンジしてみたらどうかな?
部下・間々田:どういうことですか? おっしゃっていることが抽象的すぎて…。
今市:ウチの課はルート営業がメインだけど、新規顧客を開拓しちゃいけないっていう決まりはないよね。だからさ、そういうこともやってみないか?
部下・南部:え? でも現状、大きな問題がないのに、あえてリスクを冒さなくてもよくないですか?
今市:新規開拓のどこがリスクなの? それって「チャレンジ」だと私は思うよ。今の状況にあぐらをかいていたらチームとしても、個人としても、成長は望めないと思うんだ。
南部:僕らだって成長できたらいいとは思いますよ。でも、失敗したら取り返しがつかないかもしれないし……。
部下・不動:そうですよ。失敗してまた課長に切れられるのは勘弁してほしいんすよね……。
間々田:(激しくうなずく)
今市:いや、若いうちの失敗は学びのうちだよ。私はむしろ、失敗を恐れずにどんどんチャレンジしてもらいたいんだけどなあ。
不動:……(「そんなの絶対、口先だけなくせに」と疑いの目を向ける)
今市:まあ、とにかく。私が課長になったからには、失敗もドーン!と受けとめるから、既存の枠にとらわれない提案をジャンジャン頼むよ!
間々田: 一応、考えてみますけど……。
今市:期待してるよ!
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