インスパイアマン:部下が動けない原因は、大きく2つある。1つは、スキルの問題。技術や経験不足で動けない。もう1つは、モチベーションの問題だ。アサインされた業務が、何のために行うものなのか分からない状況だと、モチベーションは湧き上がってこない。
【説明しよう】
モチベーションには、「内発的動機」と「外発的動機」の2種類がある。前者は「仕事そのものに楽しさを感じている」「仕事が何に役立っているかが分かる」という状態を指す。仕事に意義を感じられ、仕事をすることで自分の可能性も広がると思うことができればがぜん、モチベーションが高まり、自発的な行動や創意工夫につながっていく。後者は「お金や生活のために働いている」「怒られたくないからやる(感情的圧力)」といった状態が代表的で、「惰性」もその1つだろう。いわば「やらされ感」が根底にあり、「必要最低限の仕事だけこなせばいい」という考えから「指示待ち」に陥りやすい。
苗田:そうか。私は仕事を振るときに、その目的や意義を十分に伝えていなかったかもしれないですね。よし分かった! 早速、松尾くんに……。
部下にあらためて指示を出そうとする苗田課長に、インスパイアマンは待ったをかける。
インスパイアマン:いやいやいや、ちょっと待ってくれ。あなたはこのあと、部下にどう話していくつもりだ?
苗田:それは、アサインの意図や業務の意義を伝えて……。
インスパイアマン:「これこれこうだから、やってくれ。以上」か? 今までよりはマシかもしれないが、それで指示待ち問題を根本から解決できるかな。あなたはそもそも、部下にどうなってほしいんだ?
苗田:やっぱり、自分で考えて動けるようになってほしいですね。あ、それなら、私からすべて説明しないほうがいいのかな。まずはアサインの意図だけ伝えて、そこにはどんな狙いがあると思うか、質問してみるとか。
インスパイアマン:いいぞ。「まず、問う」というのは重要だ。
インスパイアマンに問われたことで、気づきを得ていく苗田課長。
苗田:アサインの意図や狙い、目的、それに、求められる成果も一緒に考えて共有しておきたいですね。数値目標や、それをどのくらいの期間で達成すべきかといったことも。
インスパイアマン:ますますいいね。
苗田:そうなると、「どうやってゴールにたどり着くか」も、話し合って決めておくといいんですかね?
インスパイアマン:いや、それには少し問題がある。
苗田:どうしてですか?
インスパイアマン:「Why(=なぜ、その仕事をやるのか)」と「What(=何を達成すべきか)」はしっかり“握る”ことが重要だ。ただ、「How(=どのように進めていくか)」は、ある程度任せて、裁量を持たせるといい。そのほうが、仕事をするうえでは面白いだろう?
苗田:なるほど。
インスパイアマン:あなたは「オーナーシップ」という言葉を聞いたことがあるか?
苗田:オーナーシップ?
【説明しよう】
「オーナーシップ」とは、個人が与えられた職務や任務に対して、主体性を持って取り組む姿勢やマインドを指す言葉である。部下のオーナーシップを高めるには、いかに部下を巻き込んでいくかがカギになる。上司が「指示するだけ」では、部下は「やらされ感」を持ってしまう。多少なりとも計画立案に加わるなど、部下が「自分の仕事」だと思えるようにしていくことが重要だ。
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