インスパイアマン:では、右手を上げて。上げたら、その腕を前に伸ばしたところにあるものをつかんで。

 右手をおずおずと、頭の上あたりまで挙げた苗田課長。そのまま、腕を前に伸ばすと――。ゴトンと音を立てて、何かが倒れたようだ。少し離れた場所で、インスパイアマンが「はあっ」と少しわざとらしくため息をつく。

苗田:何なんですか? 「腕を伸ばしたところにあるものをつかめ」って言うけど、どこに、何があるのか見えないのに、つかめるわけがないじゃないですか。それに、指示が曖昧ですよ。手はどのくらい(の高さまで)上げればいいのか、腕はどこにどれだけ伸ばすのかとか、具体的に言ってくれないと!

 一気にまくしたてる苗田課長。

インスパイアマン:(ニヤッと笑いながら)そうだろう?

苗田:そうだろうって……。

インスパイアマン:あなたの部下たちと同じ気持ちを味わってもらったんだ。

苗田:はぁっ!?

 いぶかる苗田課長の目隠しを外し、インスパイアマンはその意図を明らかにしていく。

 (イラスト:平戸三平)
(イラスト:平戸三平)

インスパイアマン:(部下の)松尾くんがあなたに言っていたことを思い出してみてくれ。

苗田:「曖昧すぎる」?

インスパイアマン:そうだ。今まさに、あなたが私に言ったことだ。松尾くんも今のあなたと同じように、(苗田課長からの)指示が「曖昧すぎる」と思っているんだよ。だから、あなたの指示で動かなければいけない部下の気持ちを、体験してもらったわけだ。

苗田:……。

インスパイアマン:ほかに何か、気づいたことはないか?

苗田:はじめに「何をやろうとしているのか」の説明がなかったですよね? それだと不安なまま動かなければならないし、めちゃくちゃストレスになります。

インスパイアマン:その通り。あなたは部下が自発的に動かない「指示待ち」であることを悩んでいるようだけど、それを解消するには、彼らを「目隠し状態」から解放してあげることが必要なんだ。

苗田:目隠し状態からの解放?

 目的や目標が分からない。状況が分からない。今、自分にできること、すべきことがイメージできない。とにかく情報が少ない――。それが、目隠し状態である。