「会社が何もしてくれない」「上司が認めてくれない」ーー口をついて出るのは「くれない」ばかり。そんな、常に「他責思考」の部下と、上司はどう向き合えばいいのか。自走するチームのつくり方、最初はこの「くれない族」との対峙から始めよう。

 日経ビジネス電子版をお読みの皆さん、はじめまして。IWNC/インスパイアマンの生田洋介です。私は普段、様々な企業に対して組織の風土改革や人材開発、チームビルディングなどの支援を行っています。

 ただし私は、現場でクライアント企業のリーダーやメンバーに何かを教え、ゴールに導いているわけではありません。クライアントが自らの経験から学び、自分たちで何かを解決し、ゴールに向かって自走するための手助けをするのが私の役割です。ランニングレースに例えるなら伴走者、あるいはペースメーカーでしょうか。時には沿道で声援を送ったり、コーチになって相談に乗ったり激励(インスパイア)したりすることもあります。それでも決してゴールまで引っ張って行ったり、車に乗せて行ったりすることはしません。

 レースは、自分の足で走ることに価値があります。それでこそ達成感を得ることができ、新たなチャレンジに立ち向かうための効力感を持つことができるからです。

 皆さんの多くは日ごろ、部長や課長といった立場で部下やチームメンバーを率いていることと思います。同時に、プレーイングマネジャーとして自らの担当案件を抱え、多忙を極めている方も多いかもしれませんね。そんな状況で常に成果を上げていくために必要なこと、それは皆さんが率いているチームを自分の足で走る、「自走する集団」に変えることです。リーダーの皆さんが手取り足取り指導せずとも自発的に行動し、成果を上げていくチーム。そんなチームを作り上げていくために、皆さんには「インスパイアマン」になっていただきたい。

 インスパイアマンとは、私が考えた造語です。人々を鼓舞しながらゴールの達成を陰で支える、「ヒーロー」「ヒロイン」のような存在とでも言えばいいでしょうか。この連載ではそんな、架空のヒーローが登場します。そして、私が組織開発の現場で経験したストーリーを元に、リーダーが自走する集団を作るプロセスを“再現”していきます。どうぞ最後までお付き合いください。

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