リーマン級のイベントが来ても耐えられる

LTVの目標が25%未満なのはなぜでしょうか。

後藤氏:世の中がリーマン・ショック級の大騒ぎになったとして、株価が半分になったとしても、25%未満で運用していれば(負債を返済するのに足りる価値があるという意味で)安全じゃないでしょうか、ということです。

 さらに環境が悪くなったときには35%くらいを目安にします。普通の会社は平時で50%とか70%です。私たちが25%や35%という基準で経営しているのは、リーマン・ショック級のイベントが来たらパーになることは許されないと思っているからです。

 また、私たちは(LTVに関連して、借り入れに)財務制限条項を付けていません。例えばLTVが何パーセントになったらデフォルトです、とはすべきじゃないと思っています。マーケットの変動は、例えば半年、1年、2~3年たてば回復することが歴史的に証明されているとすると、そのデフォルトの判断が正しくないかもしれないので。

社債償還2年分の資金確保という方針も、2年で金融環境が回復するとの前提ですか。

後藤氏:これは歴史的に分析していて、社債のマーケットがシャットダウンしている期間は長くても半年です。リーマン・ショックの際も、うちは半年後に起債しました。2年という期間がどれだけ安全かはそれでご理解いただけるんじゃないでしょうか。

 あとLTVについて、よく「株価が大きく下落したらすぐ25%に抵触するのでは」と言われます。でも、ソフトバンクGはNAVで20兆円を超えていて、その7割近くが流動性の高い上場株です。対応策はいろいろありますが、投資をやめるだけじゃなくて、投資を資金化すればいいわけです。

 こんな簡単なことをどうして皆さんが信じられないかというと、普通の会社は保有するアセットの流動性が低いからです。工場を持っていてもすぐには資金化できません。ほかのプライベートエクイティ(PE)ファンドもほとんどの場合、資産が未上場です。

 だけどうちは自己勘定でアリババ集団株を持っていたり、ソフトバンク株を持っていたりします。英アームだってエヌビディア株に交換されれば7兆円相当になります。ソフトバンクGのアセットは、安全面で非常に独特なアセットなんです。通常の投資会社のようにリスクとぎりぎりで向き合っているわけではなく、安全性をすごく意識しています。

では、IPOマーケット停滞時の備えは。

後藤氏:撃ち方やめではありません。リーマン・ショックとかブラックマンデーみたいな一時的な状況でないとすれば、チャンスです。起業家はマーケットの状況によらず次々と生まれ、どんどんビジネスを立ち上げます。そういう環境だと基本的には金融環境は締まり、起業家はエクイティの投資家を求め、かつバリュエーションも低い。

 どこまでチャンスを生かせるか、楽しむ時期なんじゃないかと。財務的にはそんなに痛みはないはずです。株価は右肩上がりではなく1~3割くらい下がるが、もみあう状況じゃないかと思います。私たちみたいに、圧倒的な流動性のある20兆円を超えるアセットを持っていれば、影響はありません。むしろそういうときこそ安全です。

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