前回、「ドバイとボストンで見た金の卵 孫氏が描く『群戦略』の主役たち」で見たように、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資するAIユニコーンがゆるやかにつながりながらシナジーを発揮する「群戦略」の片りんは、世界中で見え始めている。

 ただ孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長が「まだ1合目」と認めるように、その成否を評価するのは時期尚早だろう。出資先企業が順調に成長し、新規株式公開(IPO)などを果たして初めて、リターンが得られる。

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 それでも、地域や業種を超えシナジーを生み出す先行事例も出始めている。

 例えば、米ゴーブランズ。菓子や飲料などの商品を30分以内に速達するサービスを手掛けるが、そこで欠かせない地図データを提供するのがビジョン・ファンドの投資先で、2019年にはゼンリンが地図データの提携先を米グーグルから切り替えたことでも知られる米マップボックスだ。

 マップボックスの地図の利用が増えるほどナビAIが鍛えられ、配達スピードの向上にもつながる。両者にとってウィンウィンの「結婚」だ。

PayPayのルーツはインドに

 スマートフォン決済の「PayPay(ペイペイ)」もそうだ。QRコードを使った決済は中国で一気に普及し、その波が日本に訪れた印象があるが、PayPayの源流は別の場所にもあった。インドだ。

 飲食店から雑貨店、三輪タクシーに至るまで、インドではあちこちでQRコード決済が利用できる。その草分け的な存在として知られるのが、00年創業のスタートアップ、ワン97コミュニケーションズが運営する「Paytm(ペイティーエム)」だ。

ワン97コミュニケーションズが運営する「Paytm(ペイティーエム)」は、インドのQRコード決済で先行し11月には上場を果たした(写真:ロイター/アフロ)
ワン97コミュニケーションズが運営する「Paytm(ペイティーエム)」は、インドのQRコード決済で先行し11月には上場を果たした(写真:ロイター/アフロ)

 利用者数は3億3700万人、利用できる店舗の数は2200万カ所に上る。従来の金融サービスにアクセスできない人々に照準を合わせた金融事業でも6500万口座を抱える。

 ワン97がペイティーエムを立ち上げたのは10年。当初は携帯電話料金の支払いなど限られた用途にしか利用できなかったが、水道代や電気代などの支払い、航空券の購入、個人間送金などサービスの幅を瞬く間に拡大した。複数の競合が同様のサービスを展開するなかで、ペイティーエムが勝ち抜くことができたのは、中国・アリババ集団とソフトバンクGの存在がある。

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この記事はシリーズ「孫正義の「資本論」 巨大ファンドの内側」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。