前回の「孫正義vs起業家『深夜の30分1本勝負』 判断間違えれば数百億円失う」で見たように、ソフトバンクグループ内では世界中のユニコーン企業への投資プロセスの組織化・体系化が進んでいる。それと並んでもう一つ、「300年企業」を目指す知られざる経営手法がある。それが、機動的な方向修正だ。

 毎週月曜日、孫氏や後藤氏らグループの最高幹部が顔をそろえる重要会議がある。その名も「15年ビジョン会議」。15年という長期のイメージを幹部同士が3時間ほどかけて議論し、認識を共有するものだ。

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 外部には公開していないが、ビジョン・ファンドの投資戦略の方向性や将来目標、資金繰りについても見直している模様だ。3~5年の中期経営計画だけでなく、最近では長期ビジョンを打ち出す会社も珍しくなくなっているが、週次で見直すのは異例中の異例。なぜそこまでするのか。

 孫氏は米航空宇宙局(NASA)による宇宙船「アポロ計画」になぞらえる。アポロ計画では、空気の薄さや飛ぶ方向など、打ち上げ前だけでなく打ち上げ後にも計算を繰り返し、文字通り軌道修正を加え続ける。そうしないと月までたどり着けないのだ。

 孫氏は言う。「ロケット1基を1カ所に届けるだけでも膨大な計算と微修正をやっている。微修正のない計画というのは、執念が足りないんじゃないか。僕は本気でやりたい」。投資の打率を少しでも上げ、大負けを回避するための一つの知恵なのだ。

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