半導体大手ルネサスエレクトロニクスがパワー半導体で攻勢をかける。生産能力を2倍に増やし、世界最大手の独インフィニオンテクノロジーズを追撃する。2014年にいったんは閉じた甲府工場(山梨県甲斐市)を復活させ、24年の再稼働を目指して新生産ラインを構築する。世界的なEV(電気自動車)シフトで半導体メーカーの競争が激化する中、勝ち残りへの一里塚とする。

 「新生産ラインのニュースがいつぶりなのか、記憶にない」。ルネサスの社内が増強投資に沸き立っている。それもそのはず、実は10年のルネサス発足後、新たに生産ラインを立ち上げるのは初めてとなる。半導体の長期的な需要がそれだけ期待できることを物語っている。

ルネサスはパワー半導体の生産能力を2倍に引き上げる。小西勝也パワーシステム事業部長は「絶好の投資のタイミング」と強調する
ルネサスはパワー半導体の生産能力を2倍に引き上げる。小西勝也パワーシステム事業部長は「絶好の投資のタイミング」と強調する

 ルネサスは日立製作所と三菱電機の半導体事業が統合し、その後NEC子会社とも統合して発足した。固定費を減らして業績を立て直すため工場閉鎖や生産拠点の統廃合など合理化を重ね、甲府工場はその一環で14年に閉鎖されていた。

 ルネサスは開発や投資に巨額費用がかかる演算処理系の先端ロジック半導体などを半導体受託製造会社(ファウンドリー)に生産委託し、余剰能力を持たない「ファブライト戦略」を進めてきた。一方で自前の技術を生かしやすいパワー半導体は、ファウンドリーに生産を任せずに内製化を続けてきた。

 甲府工場には約900億円を投じる。24年上半期に稼働を始め、25年中に量産に入る。那珂工場(茨城県ひたちなか市)や高崎工場(群馬県高崎市)など複数の拠点でパワー半導体を生産しているが、甲府工場を同社最大の生産能力を持つ専用工場とする。

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