富士山の東のふもと、静岡県小山町。金太郎伝説もある自然豊かなこの土地に、使用済みアルミ缶を一貫処理でリサイクルする工場がある。「日本一のアルミ再生工場」として、飲料メーカーの中では知る人ぞ知る存在だ。使用済み素材を繰り返し同じ素材として使う「クローズドループ・リサイクル」。飲料缶、自動車、衣料品など分野を問わず採用が広がっている。

薄暗い工場建屋に入ると、銀や金、赤、青などの極彩色を放つ巨大な金属の塊が目に飛び込んできた。コンクリート床に並ぶ金属塊は、膨大な数のユーズドアルミ缶をプレス機で圧縮したものだ。「使用済み」の刻印を押したかのように、強烈な力によってぐしゃぐしゃになっている。
哀愁すら漂う金属塊。しかし、三菱アルミニウム鋳造工場鋳造二課の岡本啓伸課長は目を輝かせて見つめる。「これぞザ・都市鉱山という感じがしませんか。何度でもアルミ缶として生まれ変わらせますよ」。宝の山を目の前に再生マン魂を燃やす。
1ブロックで40キログラムほどの使用済みアルミ缶の塊は、北海道から沖縄県まで全国から、地方自治体による分別回収の他、スーパーやオフィス、学校など様々なルートで回収され、運び込まれたものだ。アルミ缶リサイクル協会によれば、2020年度はアルミ缶の消費量218億缶に対して再生利用は204億缶でリサイクル率は94%、使用済みアルミ缶を同じアルミ缶に再生した「水平リサイクル率」では71%だった。
再生処理の工程少なく、CO2を3割抑制
このコラムの前回記事「無印良品、プラごみ削減へ飲料ペットボトル全廃 調達先見直しも」では無印良品が飲料容器をペットボトルからアルミ缶に切り替えたことを紹介した。無印がアルミ缶を選んだのは、上記のように廃棄物を資源にして同じ製品としてリサイクルする「CAN to CAN」の仕組みが整っているからだ。
缶から再び缶へ―。口で言うのは簡単だが、単に溶かして固めればできるわけではない。その工程は複雑だ。回収してプレス圧縮されたアルミ塊は、リサイクル工場で、砕いて磁力や風力を使って異物を除去する。珍しいものでは、ボーリングの球、フライパンなど、アルミ缶に隠れて様々な異物が混入することがある。次は500度の高温ガスで蒸し焼きにして表面塗料を除く。さらに溶解炉で溶かし、不純物を除いて、成分を調整し、巨大なアルミ合金塊「スラブ」に鋳造する。その後はスラブを圧延し、板を巻いた状態のコイルにして、製缶工場、充てん工場へと運ばれる。
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