型を身に付けて初めて見えてくる「本質」

大愚和尚:確かにテンプレートを使えば、成果は出ますよね。この本が示すように、証明済みのテンプレート、つまり「型」が、特にビジネスの世界では多くあるものです。ただその「型」を皆が使うようになると、急に通用しなくなってしまうんですね。もちろん、それでも引き込まれてしまうものもあるのですが、大切なのは「型が流通した後」だと、私は考えています。皆が「型」を使うのが当たり前になったとき、初めて「型の奥にあるその人」が問われるわけです。

藤吉:話が上手になるためには、話し方の「型」を身に付けることも大事だけれど、それだけではダメ、ということですね。内面をどういうふうに育てていくのか。そこにも目を向けていかないと、相手が本当にどういうことを言いたいのかをつかむことはできないし、自分の考えも伝えることができないのかもしれません。

 大愚住職は長年空手をされていて、現在も指導者として道場に立っておられます。武道の世界も「型」からのスタートですよね。

大愚和尚:空手道に限らず、剣道、華道、茶道、など、道(どう)の世界は「型」から入るんです。ただし、型そのものは、鋳型のような形式でしかない。その「型」に「知」が加わると「かたち(形)」になります。「知」というのは「知恵」「道理」です。その道の初心者に、最初から「理」を説いても理解できませんから、「型」から入るのです。そして、この「型」を習得したところに「知」が加わると最強になる。藤吉さんの『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』は、そういうところへいざなう本だと思います。型から入って、知が加わる。

藤吉:「形から入って心に至る」という言葉を聞いたことがあります。いわゆる「道」の世界は、形、つまりここでいう「型」から入るものなのかもしれませんね。最初は分からなくても、決められた「型」を守り続けることで、次第に気づくことがある。

 ですから話し方においても、まずは「型」を身に付けるのが、一つの方法だと思います。僕たちの本の中でも、逆三角形型やPREP(プレップ)法といった「結論を先に伝える型」を紹介しています。けれど、型にはめるだけでは本当の自分の考えは伝わらないし、人の心を動かすこともできない。人の心を動かすには、住職がお話しされた「知」であったり、人間的な豊かさを磨いていったりしなければいけないわけですね。

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