国内の医療業界はまだまだ慎重なイメージです。連携が進むにはどのような施策が必要でしょうか?

 英国政府は、「the FemTech roundtable」というフェムテックの言葉を用いた会議を開きました。英国は医療費を全て税金で賄っているため費用対効果に厳しく、国主導で有識者を集め、フェムテックの適切な広がり方や効果について議論しています。

 米国でも産婦人科の専門学会が、フェムテックに専門家集団としてきちんとアプローチすることを声明として明記しています。

 国内では今年、経済産業省がフェムテックの実証事業へ補助金を出すとして公募を行いました。助成金を出す条件として、事業者に効果検証を約束させるのは、意味があることだと考えています。

 このように採択の条件を「データ検証と公的な発表」としていけば、最初から研究者や医師に入ってもらう枠組みが自然とできていくのではないでしょうか。

一方、国内におけるフェムテック拡大の障壁となるのが国民皆保険だといわれています。

 日本の医療制度の特徴として、まず国民は皆保険に入っており、基本的には誰でも1~3割の医療費負担で済みます。また、医療機関へのアクセスもよく、ほとんどの場合いつ、どこの医療機関に行っても受診できます。

 米国では、医療にかかるには非常にお金がかかり、保険が通るかも分からない。そうすると、必然的に病気にならないよう健康維持や予防に気を使います。

 日本は、国の制度が良すぎるために、ちょっと困ったら病院に行けばいいし、薬をもらえばいいという意識が働いてしまう。

 産婦人科領域で言えば、妊婦健診や産後健診の費用の一部は国が出しているため、わざわざ自分で医療や健康にお金を出す発想や習慣があまりありません。

 すごくいいフェムテックサービスがあっても、毎月5000円かかりますと言われると「それなら、使わない」となりやすい文化ではあります。

 私自身もオンライン医療相談のサービスを展開していますが、コンシューマー向けのサービスは難しいと実感しました。相談対応のためにドクターなど専門職の時間を確保する必要があるのに、ユーザーへのヒアリングでは払えて1回100円などと言われてしまうからです。

 ビジネスとしては成り立ちにくく、経済状況にかかわらず多くの方に使っていただきたいので、現在は企業や自治体向けのモデルで展開しています。

 日本の医療制度のいい点がフェムテックにおいては裏目に出つつあるわけです。

この状況を打破するにはどのような方法があると考えられますか?

 国が予防や健康増進に補助金を出したり、インセンティブをつけたりすることが重要になります。実際、国も医療費が限界以上に膨らんでいるため、全てを医療費で賄うのは現実的ではないと考えているのではないでしょうか。

 そうすると、民間企業を含めて予防を促すための枠組みが必要になってくる。少しずつ変わるのではと期待しています。

インフラを整えていく必要もありそうですね。

 健康課題に直結するサービスが医療保険適用外の自費のサービス中心となると、お金がある人はいくらでも使え、お金がない人がほとんど使えない状況になってしまう。そうすると、経済格差が健康格差につながりかねない。そこは医師として、とても心配しています。

この記事はシリーズ「フェムテックの萌芽」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。