着目すればまだ発見されていないお宝があると思いますが、実験や研究にはコストがかかります。これまでオスのマウスだけでやってきた研究をメスのマウスでも実施すると2倍のコストです。

 だからこそ、海外のように研究の助成金応募時の要件に性差分析を入れるなどの積極的な対策が必要です。

研究そのものを増やしていくには、女性研究者を今以上に増やす必要があるということでしょうか?

 とても重要だと思います。ただ、女性研究者だけが進めるべきものではありません。研究の質を上げ、学問を深めるためにも男性研究者にもその意義を把握し、参加してもらう必要があります。

 性差研究は女性のためだけでなく男性のためにもなります。

 例えば骨粗しょう症は女性の発症年齢が10年ほど早いため女性の病気だと思われていました。そのため、男性は見過ごされやすく女性と比べて大病につながってしまうケースがありました。性差を研究するということは、女性に限らず、すべてにおいて男女共にしっかり研究するということです。

 また、EU(欧州連合)から発表されたジェンダード・イノベーションズの最新リポート「Gendered innovations 2」では男女差だけでなく、多様な性や人種や地域差などクロス解析することを重要視し、個人の違いへ目を向け始めています。

(写真=的野弘路)
(写真=的野弘路)

国内の動きはどうですか?

 第5次男女共同参画基本計画で、科学技術・学術分野の中に「性差の視点を踏まえた研究の促進」という文言が入ったほか、3月には科学技術の方針を定める第6期科学技術・イノベーション基本計画に「ジェンダード・イノベーションズ創出に向け」という文言が入りました。

 ようやく1歩前進しましたが、重要なのは政策に入った後にどうやって進めていくかです。

 日本は海外と比べ10年以上は遅れています。女性特有の症状にも適応した開発が進むには、最新技術や開発現場の近くに女性がいるかどうかは非常に大きい。そういう意味でも女性研究者の数を増やす必要があります。

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