ココリーの販売が開始されて、東さんが目指す世界に順調に進んでいる実感はありますか?

東氏:順調に進んでいるなと思う半面、社内外の人たちにうまく伝わらないもどかしさも感じています。

 例えば、年配の男性と、30~40代の女性に何か意見を言われたら、どちらを信用するか。おそらくほとんどの方は、年配の男性のほうを信用すると思います。国内企業出身者の意見と外資系企業出身者の意見だったら、外資系企業出身者を信用する方が多いと思います。ロジカルに戦略を練っても、年齢・性別・学歴・経歴のバイアスがいろんなところに根付いていて、その論理がスムーズには浸透していかない。でも、こうしたバイアスは多くの人が持っているものです。当然、私自身も持っていると思います。

 結局100回くらいやり取りを繰り返して、ようやく理解してもらえることもあります。組織としてはまだまだ未熟ですが、しがらみなく練った戦略は、最終的には一番鋭いという自信はついてきました。

その戦略どおりに進んだ先に、乳がん検診の受診率は上がりますか?

東氏:マンモグラフィーの痛みや被ばくを理由に検診に行かない人はかなりいるので、弊社の装置だけで可能になった場合「受けてみてもいいかな」と思う人は確実にいらっしゃると思います。

 ですが、「乳がんが判明するのが怖いから検診に行かない」という人や、「毎日健康に気を付けているから私は大丈夫」と思っている人も一定数います。そう考える人にとっては、検診が快適になることは受診の意思とあまり関係がありません。

 早期発見できれば短期入院で済み、治療も「外科手術しない」「全摘しない」「痛みもない」となればメリットが感じられて「早めに検診を受けたほうが賢い」と分かり、受診率が少しずつ上がっていくと思っています。

厚生労働省は、早期発見のメリットと被ばくのリスクのバランスを考慮して、「40歳を過ぎたら2年に1度」の乳がん検診を推奨しています。「ココリー」であればリスクを抑えて、高頻度で検診を受けることもできるようになりますか?

東氏:マンモグラフィーの検査に引っ掛かると、針生検を受けることになるのですが、その中でがんになっている人はだいたい17人に1人です。つまり、16人は不必要に針を刺されていることになります。マンモグラフィーの精度や針生検の現状から考えると、一番罹患率が上がる世代に特化させたほうが、「集団」に対してはメリットが大きい。

 「17人に1人」が大丈夫と思う人もいれば多いと感じる人もいるので、自己判断になります。「ココリー」は被ばくをしないので、心配な方は30代から受けていただきたいです。ただ、どんな検査も100%の精度というのはありません。がんじゃないのに針生検に進む可能性もある。そこはデメリットですね。

最後に、東さんはフェムテックをどう捉えていますか?

東氏:フェムテックが話題になることで取り組みを知ってもらえる機会が増えたことはすごくありがたいです。特に女性誌で取り上げられると「デザインにもこだわってよかった」と感じます。

 一方で、女性活躍をうたって民意を味方につけるためなど、何か政治的なものも感じます。目的が達成されると、スポットライトがまた別のところに向かうのではないかと、冷静に見ています。

 トレンドワード的に一過性で終わるのではなく、きちんと社会に実装されてほしいですね。流行が去っても課題が消えるわけではありません。私は課題解決のために創業したので、流行に振り回されずに着々と続けていくしかないと思っています。

(構成:川崎絵美)

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