事業会社の反応はいかがでしたか?

東氏:乳がん市場の中で、今一番ホットなトピックはデンスブレスト(高濃度乳腺)です。乳腺比率が高いデンスブレストの人の場合、がんの検出率が落ちることが問題になっています。つまり、見落とす可能性が高くなる。事業会社の方は学会などにも出向かれているので、そのことを知っている方が、ニーズを理解して弊社への出資を決めてくださいました。

乳房用リング型超音波画像診断装置「COCOLY(ココリー)」(写真:菊池くらげ)
乳房用リング型超音波画像診断装置「COCOLY(ココリー)」(写真:菊池くらげ)

ココリーは、どのようにして検診の精度を高めているのでしょうか?

東氏:がん検診には様々な方法がありますが、例えば、リキッドバイオプシー(採血)であれば検査の手技依存性がなく、装置の精度だけで決まります。一方、画像診断の場合、必ず人が読影しなければなりません。そうすると装置の精度だけではなく、装置を扱う技師のスキルと、読影者のスキル、その掛け算によって精度が決まります。

 新しい装置を出すと、操作者と読影者の能力を上げることがまず必要になるので、精度が安定するまで時間がかかります。ですからココリーは、まず操作を簡単にしようということで、誰でも同じ画像が撮れるようにしました。これは課題を1つ解決しているといえます。

 今後は人工知能(AI)を搭載していくのですが、AIにはデータが必要となるため最初は読影者がやってくれないと技術が進みません。やはり読影トレーニングが必須になります。

2021年4月に医療機器製造販売認証を受け、同年5月より販売が始まっています。反響はいかがですか?

東氏:21年11月に開催された「第31回日本乳癌検診学会学術総会」で初めてココリーを展示しましたが、反響は想像以上でした。乳がんの検診装置で、新しいものはめったに出てこないので、注目していただいたのかなと思います。「画像を見せてください」「何人測れますか?」「撮影の時間はどれくらいですか?」「ちょっと寝てみていいですか?」といった声を掛けてくださる医療関係者の方々が多くいらっしゃいました。

医療機関の方たちから評価されたポイントはどこなのでしょう?

東氏:検査技師にとっては、撮影が難しくないという点です。エコー検査の場合、技師がエコープローブという機器を使って、乳房に超音波を当てて動かしながら検査していくため、技師が怪しいところを見つけられれば該当箇所のエコー画像を記録しますが、その能力には個人差があります。医師は技師が作成した検査リポートを見て心配になると再検査するケースもあるそうです。

 個人の能力で発見できるかできないかが、全て決まる。「見落とし」への不安から、技師も医師も大きなストレスを感じていると思います。ですからココリーのように個人の能力を過剰に要求せず検査できる機器は安心につながります。

 技師の能力に差があっても、技師を選んで検診を受けることはほぼできません。これからはAIによる画像診断は必須だと思っています。ただ、AIが「診断支援」という位置付けになると、診断しているのは医師だということになるわけです。AIが完成したとしても、「最終責任を取るのはあなた方です」と言われてしまいます。

 医師のストレスを完全になくすには、臨床試験もやった上で、医師を介在させずに診断までできるようなAIをつくるしかないのですが、現状はガイドラインもまだ定まっていないので、ハードルはかなり高いです。

 一方で、検診を受ける女性の立場で考えると、AIが判断した画像が手元にやってきた時に、医師と対面で話したり症状についてもう少し詳しく聞いたりしたいですよね。読影できる先生がいてくださることは大事だと思います。