女性の9人に1人がかかるといわれている乳がん。年々罹患(りかん)率は上昇している一方で、乳がんの受診率は半分に満たない。その原因と考えられているのが、マンモグラフィーによる検診時の痛みと放射線の被ばくリスクだ。
今回紹介するLily MedTechは、乳がん検診の受診者が感じる痛みや被ばくリスクを軽減する乳房用リング型超音波画像診断装置「COCOLY(ココリー)」を開発しているスタートアップ。検診の精度が、撮影時の技師スキルに依存するという課題解決も目指している。
乳がん検診のイノベーションに取り組む、Lily MedTech代表取締役の東志保氏に話を聞いた。

会社を立ち上げた経緯を教えてください。
Lily MedTech代表取締役の東志保氏(以下、東氏):2013年ごろ、東京大学の工学系研究科の研究室の中で、リングエコー撮像法の技術シーズの研究・開発を進めていました。その結果を学会などで発表したところ、医師たちから高評価を得ました。
私はその頃、全く異なる企業にいましたが、超音波の画像としてはあり得ないくらい明瞭な画像が撮れていて、その画像を見て私自身も大きな衝撃を受けたのを覚えています。
ただ、高度な技術があったとしても、課題を解決して、最終的には利益につなげていかなければ事業として成り立ちません。そこで、まずはニーズがあるかどうかを医師にヒアリングしました。結果、医師が現状の検診には大いに課題を感じていることが分かり、前職の会社を辞めて、東大の研究室に移り、資金調達を開始して創業に至りました。
東さんは当時、どちらの企業で働いていたのですか?
東氏:JEOL RESONANCEという計測機器メーカーです。研究用の計測機器で、分子構造を特定するための大型装置の開発を行っていました。
私が超音波の技術に触れたのはそれよりももっと前に遡ります。米国の大学院に留学する前に日立製作所の中央研究所で研究補助員として働いていたことがあり、たまたま超音波チームに配属されました。そこでは今の技術シーズではなく、医用超音波の研究開発を行っていました。
課題を解決できるかどうかは技術だけの問題ではなく、ビジネス側の問題も大きいと考えます。やってみないと分からないですし、社会実装に向けて「やり切るか」「やり切らないか」。ポテンシャルを感じているのなら、やらなければ証明できないと思いました。
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