「フェムテック」とひと言で言っても、医療技術との関わりが深いものから、ちょっとした不快感を解消するアイテムまで多岐にわたる。生活家電を中心に展開しているシャープが、着目したのは生理用品の収納ケースだ。スマートフォンのアプリと連携し、残数や生理周期を管理できるIoT収納ケースを開発している。

 経済産業省の「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の採択事業にも選ばれ、現在は商品化に向けて実証実験を行っている。

 同社がフェムテック市場に参入した経緯について、企画者であるシャープ新規事業企画開発部の寧静(ねい・せい)氏と、設計に携わった新規事業企画開発部課長の谷村基樹氏に話を聞いた。

シャープ新規事業企画開発部の寧静(ねい・せい)氏(写真=的野弘路)
シャープ新規事業企画開発部の寧静(ねい・せい)氏(写真=的野弘路)

生理用品のIoT収納ケースについて開発の経緯を教えてください。

寧静氏(以下、寧氏):私たちはもともと医療知識を持っているわけではありません。今ある技術で、女性が日常生活の中で抱える小さなストレスを解決できないかという観点から開発を進めてきました。

 女性の悩みをヒアリングしていく中で、生理時の2つのストレスがあることが分かりました。1つは生理周期の管理です。記録できるアプリは世の中に数多くありますが、入力を忘れてしまい継続が難しいという難点がありました。もう1つは、かさばるナプキンの収納場所や、生理用品の買い忘れが困るというものです。

 そこで、生理用品を種類ごとに収納できて、専用アプリで残量を確認できるIoTケースを開発することになりました。アイテムごとに、重量の増減で残数が分かるようになっています。このセンシング技術は弊社独自開発ではありませんが、家電にデータを蓄積してお客様に価値ある情報を提供するIoT技術のノウハウがシャープならではだと考えています。

IoT収納ケースはどのような機能を備えているのでしょうか。

寧氏:ケースに収納した生理用品を、何枚使ったかを自動で記録し、スマホのアプリで残量を確認できます。また、使用記録から月経の開始日、終了日なども自動的に記録できます。今はまだプロトタイプですが、将来的には、アプリ内で生理用品を注文して購入できるようにしたいと考えています。他のサービスとも連携できればより便利になるのではないかと思案しています。

 本来、生理用品を隠すべき存在とは思っていません。しかし、女性のニーズを調べると「できれば隠したい」「目立たないほうがいい」「清潔感を重視したい」といった声が少なからずありました。いくつかの種類を使い分けている方が多いので、夜用・昼用・ライナーなどサイズ別に収納できるようにしています。現段階では実装していませんが、次の生理日予測の機能も搭載していきたいと考えています。もし、使用頻度で異常があるときはアラートを出して、体が発しているサインに気づけるようになれば。

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