メディアやネットなどで流されている数多くの健康情報と同じように、脳に関する情報も科学的事実から噂やデマまで玉石混交だ。何が真実で、何がウソなのか。その代表的な例を最新刊『脳メンテナンス大全』の中から脳科学者の著者が紹介する。
※本原稿は、『脳メンテナンス大全』(クリステン・ウィルミア、サラ・トーランド著、野中香方子訳)を抜粋・再構成したものです。

クラシック音楽は胎教にいいって本当?

 まず、人間は脳の10%しか使っていないというのはウソだ。それどころか休息中や睡眠中でも、脳を100%使っている。実際、睡眠中の脳は実に活発で、昼間に溜まった老廃物を除去するなど、重要な仕事をこなしている。

 人類は地球上で最も大きな脳を持っているというのもウソだ。最大の脳を持つのはマッコウクジラ(ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に登場するクジラ)で、脳の容積は人間の脳の5倍もある。大きな脳のおかげでマッコウクジラは大半の哺乳類より頭がいい。コミュニケーション能力が非常に優れていることが数々の研究によって明らかになっている。マッコウクジラは研究対象とするには大きすぎるが、同じクジラ目のイルカは、訓練すれば鏡を見て自己認識できるほか、海中の機雷や海で行方不明になった兵士を探すこともできる。

 子どもを持つ人は、わが子にクラシック音楽を聴かせて育てると、幼稚園のクラスで一番賢い子どもになる、という話を聞いたことがあるかもしれない。しかし、ベートーベンを聴いて育った赤ちゃんには残念なお知らせがある。胎教に良いと謳(うた)うCDは大量に売られているが、クラシック音楽を聴かせても、胎児のIQは高くはならない。

最大の脳を持つ生物は、人間ではなくマッコウクジラだ(写真:Martin Prochazkacz/Shutterstock.com)
最大の脳を持つ生物は、人間ではなくマッコウクジラだ(写真:Martin Prochazkacz/Shutterstock.com)

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