「パワハラ」とは、傍から見ていても怖いもの

 「威圧的な態度」というのは、当事者だけでなく、周囲の人が見ても怖いと思う態度です。

 昔、乗り合わせた電車で携帯電話のベルがけたたましく鳴り響いたことがありました。しかも、その携帯電話の持ち主が電話に出たのです。女子大生のようでした。すると、目の前にいた40代くらいの男性がかっと目を見開いて、叫びました。「おまえは車内で通話をしたらいけないのを知らないのか!」と。わたしは思わず、メールチェックしていた携帯をポケットにしまいこみました。その男性の怒鳴る姿が怖かったからです。

 これが「威圧的」ということです。当事者ではない、その周囲にいる人たちが、 あたかも自分も叱られたかのように萎縮してしまう言動のことです。

そういわれれば、パワハラも、周りが見ていてハラハラドキドキするものです。

 それで思い出したのですが、かつて上司が、わたしの先輩がまとめた報告書を何度も書き直させたことがありました。その先輩は40代の中堅で、十分に仕事のできる人でしたから、最初に書き上げた報告書からして誰が見ても十分なレベルに仕上がっていました。ところが、その上司は、彼の何が気に入らないのか、些細(ささい)な部分にケチをつけて何度もやり直しをさせたのです。

 部外者のわたしがなんでこんなことを知っているかというと、その上司は、報告書をめぐる先輩とのメールのやりとりに、たくさんの関係者をccに入れていたからです。しかもわざわざ選んだかのように、深夜や週末に何度もやり直しを命じるメールを出していました。これには関係ないはずのわたしも、背筋が凍るような恐怖と不快感を覚えたことを、何年もたった今でも覚えています。

 このような穴を掘らせては埋めさせて、また穴を掘らせることを繰り返させるようなパワハラはもちろん論外です。

 しかし、正しい指摘ならば、チームのメンバーに納得できるような形ではっきり伝えることが必要な場面もあるように思います。

 もちろんあなたは上司として、パワハラのような威圧的な態度をとってはいけません。

 しかし、一方で、毅然とした態度はとらなくてはなりません。

パワハラになる威圧的な態度とは、当事者ではない、第三者の視点から見て、恐怖を感じさせるような態度である(イラスト:PIXTA)
パワハラになる威圧的な態度とは、当事者ではない、第三者の視点から見て、恐怖を感じさせるような態度である(イラスト:PIXTA)

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