昇進して課長になったものの不安な「わたし」が、アドラー心理学を研究する哲学者の「先生」に、リーダーとしての悩みを打ち明け、戸惑いながらも、成長していく――。
本連載では、ベストセラー『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の著者である岸見一郎氏の新刊『叱らない、ほめない、命じない。―あたらしいリーダー論』から、エッセンスを紹介しています。
今回は、中間管理職が抱く「部下としての悩み」について。
※ 以下、太字が「わたし」からの問いかけ、細字が「先生」の返答です。
(構成/小野田鶴)
考えてみれば、わたしは中間管理職ですから、上司であると同時に部下でもあります。それで、最近、ひどくショックを受けた出来事がありました。
先日、人事異動に伴う歓送迎会で、久しぶりに部署でささやかに宴席が開かれました。その際、お酒が入っていたせいもあってか、直属の上司からひどく辛辣な言葉を聞かされまして……。
怒られたり、叱られたりするだけならまだいいのですが、具体的な同僚の名前を挙げて、「どうしておまえはあいつのようになれないのだ」「あいつだったらこういうときは、こんなふうにやってくれるぞ」と、みんなが話を聞いているなかで比べられたのです。「比べられる」というのはなかなかしんどいもので、どう自分の気持ちを立て直したらいいものか、今もわからずにいます。
そういう上司には、「あなたは、そういうふうにお考えなのですね」といえばいいのです。
「どうしておまえはあいつのようになれないのだ」などと、他人と比較することで自分の価値を貶(おとし)めるようなことをいわれたとしても、それは「その上司の自分に対する評価」でしかありません。
その「評価」と、自分の「価値」は、別物だと割り切らなくてはいけません。

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