パワハラ上司が、無能とは限らない

「支戦場」にメンバーを呼び出していじめるような人が、本当に全員、「主戦場」において無能なのでしょうか。そこにわたしは疑問を覚えるのです。

 わたしの友人に、かつて社内初の女性部長に抜てきされた人がいます。抜てきされて一年後にパワハラで降格されました。彼女の当時の仕事ぶりを思い出すと、「主戦場」だけに集中していれば優秀なのに、下手に「支戦場」に関心を向けてしまったがゆえに、足をすくわれたような気がします。彼女にパワハラ傾向があったことは、友人であるわたしも認めざるを得ないのですが、初めての女性部長ということで周囲のやっかみもあり、彼女がメンバーにきつく当たったことが、男性の上司以上に問題視された気がします。

 性別の問題はさておいても、彼女のように「主戦場」に集中すれば優秀なリーダーが「支戦場」に関心を向けてしまうというのは、本人にとっても会社にとっても非常に損で、もったいないことだと感じます。こういうことが起きるのを、防ぐ方策はないのでしょうか。

 あなたが指摘される通り、「主戦場で無能だから、支戦場に行く」という人ばかりではないとは思います。

 「主戦場」に集中できない人というのは、対人関係を重視する人です。そういう人は、確かに、主戦場の仕事だけでは満足できないかもしれません。主戦場で勝利を得てもなお、支戦場でも勝とうとして戦う。そういう事象も起きるでしょう。対人関係を重視する人のなかにも有能な人はいるでしょうが、仕事以外の場にまで関心を向けた時点で、もはや優秀なリーダーではなくなるのです。

本来の仕事に集中すれば有能な人に、余計な人間関係に気を逸(そ)らさずにいてもらうには、どう働きかけたらいいでしょうか。つまり「主戦場」で有能ならば、「支戦場」に気を逸らさないでほしい、ということなのですが。

 「支戦場」にいるときのその人とは、極力、付き合わないようにするということです。そういうときは何をいわれても、軽く聞き流す。聞き流すしかないのです。

 そういうタイプの人たちは、「支戦場」にいるときでも注目されがちです。怖い上司だとか、仕事と関係ないところでも部下や取引先の人を叱り飛ばすような人というのは、なぜか存在感があって、尊敬しているわけではないけれど、どこか一目を置いてしまいます。そのような状況にあると、対人関係型の人というのはますます図に乗るといいますか、やることがエスカレートしていきます。

 だから、どこかで「そういうことをしなくても優秀なのだ」ということを伝えたい。

それはつまり、「支戦場」でおとなしくしてほしいならば、「支戦場」にいるときは相手にしないようにせよ、というわけですか。

 相手にしないというより、注目しない。

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