昇進して課長になったものの不安な「わたし」が、アドラー心理学を研究する哲学者の「先生」に、リーダーとしての悩みを打ち明け、戸惑いながらも、成長していく――。
本連載では、ベストセラー『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の著者である岸見一郎氏の新刊『叱らない、ほめない、命じない。―あたらしいリーダー論』から、エッセンスを紹介しています(前回は、こちら)。
華々しい実績を持つ同僚の横暴な振る舞いが、プロジェクトチームのメンバーを傷つけ、モチベーションを下げている。そんなわたしの訴えに、先生は、プライドが高く、自分が本当は無能であることを自覚している人ほど、他人に責任を転嫁し、攻撃的になると説明する。
そんな横暴な上司を、周囲の力で変えることは可能なのか。あるいは、あきらめるべきなのか。
※ 以下、太字が「わたし」からの問いかけ、細字が「先生」の返答です。
(構成/小野田鶴)
先生、わたしが期せずして管理職に指名されたとき、最初に「嫌だ」と思ってしまったのは、これまでに「嫌な上司」というのをたくさん見てきたからなのですよ。
そうおっしゃっていましたね。
そういう「嫌な上司」には、必ず取り巻きのような人たちがいて、これがまた厄介というか、不愉快というか、いろいろと困った事態を引き起こすのです。わたしから見るに、先生はとても優しい人で、基本的に性善説に立たれているのだと思います。けれど、現実に組織のなかで働いていると、びっくりするような人もいるのです。
いるでしょうね。
例えば、気に入らない人間を排除するための陰謀のようなものをめぐらせていたりする。そういう信じられないほど恐ろしい人たちの存在に、どう対処したらいいのか、ということを、今日はひとつ、先生と語り合ってみたいのです。
あなたはおそらく、特定の誰かをイメージされているのではないですか。
ええ、まあ、そうなのですが……。

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