昇進して課長になったものの不安な「わたし」が、アドラー心理学を研究する哲学者の「先生」に、リーダーとしての悩みを打ち明け、戸惑いながらも、成長していく――。
本連載では、ベストセラー『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の著者である岸見一郎氏の新刊『叱らない、ほめない、命じない。―あたらしいリーダー論』から、エッセンスを紹介しています。
停電をいいことに大事な仕事をほったらかして自宅に帰ってしまった後輩に、ずっとわだかまりを感じているという、わたし。それを聞いた先生は、学校に行きたくない子どもたちが、頭痛や腹痛などの「症状を作り出す」という話を始めた。
(前回『嫌われる勇気』著者「なぜ、あの人は仕事から逃げるのか?」)
※ 以下、太字が「わたし」からの問いかけ、細字が「先生」の返答です。
(構成/小野田鶴)
理由をつけて仕事から逃げ出す若者は、学校に行きたくなくて、お腹(なか)が痛くなる子どもと同じ、というわけですか。わたしもかつて、子どもの不登校に悩んで、先生に相談したわけですが……。
わたしの息子も「学校を休みたい」といい出しました。 学校を休むときには、親が学校に連絡しないといけません。子どもが勝手に学校に連絡して「今日は休みます」と伝えるわけにはいきません。だから、わたしは息子に尋ねました。「学校を休むなら、学校に連絡しようと思うけれど、なんといったらいい?」と。そうしたら「お腹が痛いので休むと連絡してくれ」と答えました。ちゃんと理由を教えてくれました。
そこで「3年×組の岸見です」と、学校に電話しました。「どうされましたか?」 と先生に聞かれたので、「息子が『今日はお腹が痛いので休む』といっています」 と伝えました。わたしは「学校を休ませます」とはいいませんでした。なぜなら、学校を休むか休まないかは、親の課題ではなく、子どもの課題だからです。それで、「息子が休むといっています」といういい方をしたのですが、電話口の向こうでは、先生が不快な表情をされていることが手にとるようにわかりました。
本来、子どもが学校を休むのに理由は要りません。

Powered by リゾーム?