「なぜ?」と問うたところで、本人にもわからない

 アドラーの言葉を借りれば、「なぜ」という問いに対する答えは、心理学者であっても、答えるのが難しいものです。「なぜ、あなたはそんなことをしたのですか」と問われても、それにきちんとした答えを出すのは、心理学者でもなかなかできるものではありません。

 停電で家に帰ってしまった彼女自身に、「なぜ」と問うても、よくわからなかったのではないでしょうか。ただ気が動転してしまって帰ったというだけかもしれないし、何かほかに理由があったかもしれない。

 今後のことを考えるしかないのであって、過去の言動の理由を問うことにあまり意味はありません。先に帰っていいはずはないことを彼女が知らなかったはずはありませんから、叱っても甲斐(かい)はなかったでしょう。

 停電の後に、あなたが彼女にかけられた言葉というのは、次のようなもので十分だったと思います。

「あなたが今、やっている仕事は大事なものです。今回の停電では幸い、大事に至らず、やるべきことを終えられてよかった。けれど、今日の仕事をわたしだけでやるのは大変だった。どうしていいのか判断に迷ったときは事前に一言、わたしに相談してほしい」と。

わたしのどこかに、彼女に「相談しにくい」と思わせる何かがあった、ということでしょうか。

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