「あるべき部下の姿」ではなく、「ありのままの部下」

リーダーの仕事とは、メンバーが、自分に価値があると思えるように援助し、仕事に取り組む勇気が持てるように援助すること。以前にも、うかがいました(第4回参照)。

 そのような援助ができるためには、「あるべき部下」ではなく、現に「ある部下」、 ありのままの部下を認めるところから始めるしかありません。部下の行動ではなく、部下の存在に注目し、存在を承認すること。これをわたしは「存在承認」と呼んでいますが、フロムのいう意味での「尊敬」するということと同義です。

折に触れて「ありがとう」をいうというお話もありました。これも存在の承認ですね。

 さらにフロムは、尊敬とは、相手がその人らしく成長発展していくように気遣うことであるといっています。入社してきた人を会社に適応させるのではなく、若いメンバーがその人らしく成長していく援助をするということです。

 ワードもできる、エクセルもできるというような「ほかの誰とも交換しうる存在」として若いメンバーを見るのではなく、「唯一無二の存在」として見る。このような意味において、上司が部下を尊敬してこそ、会社は発展していくのだと思います。

わたしたち中高年が昔からやってきたことを踏襲するのでは、発展はありませんから。

 若い人の感性、知性のほうが間違いなく優れています。

もう一つの条件が、「信頼」でしたね。

次ページ なぜ、部下の代わりに資料をつくってはいけないのか?