同性婚が認められない日本から、人材の海外流出が起きている

 LGBTQ社員を支援する動きは、今大手企業の中で急速に広まっている。グローバル企業では、日本で同性婚が法律上認められないことで、優秀なLBGTQ人材の海外流出が起きているのだ。同性のパートナーやLGBTQの家族を持つ優秀な人材がLGBTQへの差別を禁止する法律のない日本への赴任を辞退する、またLGBTQのカップルが子どもを持ちたいと海外への異動を希望するといったケースが出てきている。そこで同性婚の法制化実現に向けてのキャンペーン「ビジネス・マリッジ・イクオリティ」が始まり、2021年9月6日時点で177の企業・団体が賛同を表明している。

 CEOの貴田さん自身、パートナーを伴っての日本赴任にあたっては法の壁に阻まれて苦労した。米国で同性婚をした英国人のパートナーは、日本では貴田さんとの法的な婚姻関係が認められないため配偶者ビザの発行が認められず、就労ビザを得るまで2年かかったという。こうした経験も踏まえ、企業が誰でも安心して働ける環境整備をするにも限界があるとして、LGBTQに対する差別禁止、さらには同性婚を認める法整備を進める必要があると、貴田さんは国会議員らとの対話も重ねている。

 貴田さんは米国では「アジア人、LGBTQ」というマイノリティだった。しかし日本の企業社会では今や「日本人、男性、経営者」という強力なマジョリティの条件を手にしている。そのパワーを自覚しているからこそ、自分にしかできない変革の波を起こそうと発信を続けているのだ。



「多様性」に挑む人たちの
実録・風土改革!!

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野村浩子(著) 日本経済新聞出版 1980円(税込み)

この記事はシリーズ「本気のダイバーシティは、トップの語りから始まる」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。