誰にとっても失敗は避けたいもの。しかし、『世界「失敗」製品図鑑』の著者である荒木博行氏は「失敗とは必ずしも避けるべきことではない」と話す。その理由は何なのか? 『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』の監訳者でエール取締役の篠田真貴子氏と、失敗について語ってもらった。

そもそも失敗とは何か

篠田真貴子氏(以下、篠田):『世界「失敗」製品図鑑』では、米グーグルの「グーグルプラス」、米コカ・コーラ社の「ニュー・コーク」、ファーストリテイリングの「スキップ」、ソニーの「AIBO(アイボ)」など世界的企業の失敗事例について、その「失敗」の経緯と理由を分析されています。著者である荒木さんにまずお聞きしたいのが、「失敗とは何か?」ということです。

荒木博行(以下、荒木):失敗の定義についてですね。

篠田:この本は製品を扱っているので、売れたら成功ですし、思った通りに売れなかったら失敗ですよね。でも、私たちの普段の仕事では、成功か失敗か線引きするのは難しいケースもあると感じます。

荒木:そうですね。

篠田:私が企業に勤めて財務担当をしていたときに、事業やプロジェクトへの理解を深めたいと思い、「成功するプロジェクトはこの要素を満たしている」という成功モデルの仮説を作ったんです。以降、「まあまあ成功した」「まあまあ失敗した」とみられていた様々なプロジェクトを、そのモデルに照らし合わせるようしました。すると、社内で「これは成功である・失敗である」といった合意が取れるようになってきたんですね。

<span class="fontBold">篠田真貴子(しのだ・まきこ)氏<br>エール取締役</span><br>社外人材によるオンライン 1 on 1を通じて、組織改革を進める企業を支援。「聴き合う組織」が増えること、「聴くこと」によって一人ひとりがより自分らしくあれる社会に近づくことを目指して経営にあたる。2020年3月のエール参画以前は、日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008~18年、ほぼ日(旧・糸井重里事務所)取締役CFO(最高財務責任者)。退社後「ジョブレス」期間を約1年設けた。慶応義塾大学経済学部卒、米ペンシルベニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。人と組織の関係や女性活躍に関心を寄せ続けている。『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』『ALLIANCE アライアンス 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』(ダイヤモンド社)監訳。</a>
篠田真貴子(しのだ・まきこ)氏
エール取締役

社外人材によるオンライン 1 on 1を通じて、組織改革を進める企業を支援。「聴き合う組織」が増えること、「聴くこと」によって一人ひとりがより自分らしくあれる社会に近づくことを目指して経営にあたる。2020年3月のエール参画以前は、日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008~18年、ほぼ日(旧・糸井重里事務所)取締役CFO(最高財務責任者)。退社後「ジョブレス」期間を約1年設けた。慶応義塾大学経済学部卒、米ペンシルベニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大国際関係論修士。人と組織の関係や女性活躍に関心を寄せ続けている。『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』『ALLIANCE アライアンス 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』(ダイヤモンド社)監訳。

 さらに、「まあまあ失敗した」経験を、次に生かせるようになりました。また、失敗だと思われていたプロジェクトを、成功モデルに照らし合わせてみると、「まだ失敗とは言えないからもう少し続けてみよう」という判断もできるようになりました。

 つまり、このときの私の経験では、社内で失敗の基準が決まってから、成功からも失敗からも学べるようになったんですね。でも、そういう基準がない場合、失敗の基準はどう考えたらいいのでしょう?

荒木:実はこの本でも、失敗の定義はぼやかしているんです。そもそも失敗とは抽象概念だと僕は思います。篠田さんが仰る通り、世の中のビジネスの大半は、成功もどきであり失敗もどきでもあるんですね。大成功したプロジェクトも、実は失敗の入り口であるかもしれない。

 だから、失敗を定義することは、僕は意味がないと思っています。企業が財務的にうまくいっていない、顧客が集まっていない、PV(現在価値)が伸びていないなど、ビジネスにおいてうまくいかないことは多々ありますよね。それをいちいち「失敗だ」「成功だ」と決めても実務的には意味がないんです。そうではなく、成功も失敗も全ては経験にすぎない。その経験から何を学び、次のアクションにどうつなげるかという問いを立てることが大事なんです。

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