もみ殻を燃やして遠赤外線方式で乾燥

 ドローンによって米の生産性が上がるとすると、次に考えなければならないのが質の向上だ。この点に関して、ユニークなスタートアップがフィリピンにある。

 稲作における代表的なバイプロダクトであるライスハスク(もみ殻)を使って米を乾燥させる活動を行っている「KomeTech」だ。フィリピンには無数の島があり、様々な場所で稲作が行われているが、加工施設がある主要都市まで輸送するには、手間とコストがかかり、質も低下してしまう。しかし、その場で乾燥させられれば、品質を下げることはない。

 フィリピンの農村では、今でも収穫した米の乾燥を天日干しで行う。日本では一般的に使用されている米乾燥機で短時間で乾燥させることができるが、天日干しだと乾燥させるのに最低でも3週間はかかる。おまけに不均質なために高く売れない。

 ならば日本と同じように乾燥機を導入したいところだが、人口が爆発的に増えている東南アジアでは、米の品質向上より大量生産が求められている。そのため、そもそも高品質な乾燥機ではオーバースペックな上に、購入できる予算もないのだ。

 そこでKomeTechは、バイプロダクトであるライスハスクを燃焼させ、遠赤外線方式で乾燥させる小型の機械を開発。それによって、離島内においても質の高い米を生み出すことが可能にしようとする取り組みだ。バイプロダクトを使った循環型モデルでもあり、装置を小型化することでディセントラライズド(非中央集権化)も実現したプロジェクトなのである。

 実現すれば、現地の農家の需要や収入に見合った、低コストな乾燥機を開発できる。当然、材料の輸送費もかからない。つまり、より彼らの抱える課題に寄り添った形で、かつ持続的なビジネスが成り立つ。このように、ローカルで循環させられるコストや技術によって、ビジネスとして持続できる状態がローカルサステナビリティーだ。

 日本では一見すると当たり前の普及品でも、新興国ではまだまだ高額なプロダクトとなる。現地調達できるものと技術を組み合わせることで、深刻な課題に対してローコストで持続的(サステナブル)に解決するローカルサステナビリティーは、ディープテックのひとつの型となっている。

(この記事は、書籍『ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』の一部を再構成したものです)

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