ここで、インドネシアとマレーシアの事例を1つずつ取り上げたい。くしくも「バイプロダクトを利用」し「道路にまつわる課題を解決」するという共通点を持った2つの事例だ。
まずはインドネシアの「Tech Prom Lab」から紹介しよう。メンバーは皆インドネシアのバンドン工科大学の研究生で、「テクノロジーをマージして課題を解決する」という壮大なビジョンを抱いた多国籍のチームだ。
彼らが開発しているのは「廃棄物を使った建築素材」。具体的には、インドネシアの産業廃棄物の一つである石炭燃料から生まれる廃棄物を利用した、道路に敷き詰めるための「浸透性の高いブロック」である。
アスファルトは高額ということもあり、インドネシアの道路にはまだまだ未舗装の部分が多い。また、排水溝が道路脇に整備されていないため、まとまった雨が降るたびに道路が冠水して川のようになってしまうという課題もある。
こうした2つの課題を解決するアイデアとして生まれたのが、この建築素材というわけだ。この素材には、彼らが研究開発したポリマー技術が加工されている。製造工程がシンプルで、浸透性が高い。そんな利点を持つ新しい素材は、大雨による冠水被害で悩まされる地域を救う可能性を秘める。
この素材には、実は「強度の問題」という弱点があった。しかし、日本のあるケミカル系企業に「発見」されたことで、この課題を解決できる見通しがついた。この日本のケミカル系企業が持つ技術は、独自のものとはいえ決して最新技術ではない。従前から存在している技術が、ディープイシューと出合うことによって新たな役割を担うことになったのである。
次に、マレーシアの事例を紹介しよう。インドネシアのTech Prom Labが「浸透性の高いブロック」を開発したのに対し、マレーシアのベンチャー企業である「Paverlog」が開発したのは、パーム油の搾りカスであるアブラヤシの殻を使った「保水性の高いブロック」である。高温のマレーシアにおいて、この技術は打ち水と同じ効果を発揮する。同じブロックでも、シチュエーションが変わると課題が変わり、テクノロジーも変わるのである。
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