社員の活動が、社会貢献とイノベーションの鍵を握る(写真:PIXTA)
社員の活動が、社会貢献とイノベーションの鍵を握る(写真:PIXTA)

CSR(企業の社会的責任)や企業の社会的価値などのテーマが世界的に話題だ。中でも注目を集めているのがソーシャル「イントラ」プレナーシップの考え方である。オーストラリア、マッコーリー大学経営学部のデビー・ハスキ=レーベンサール教授と共に、次世代のソーシャル「イントラ」プレナーシップの事例と企業にもたらす効果をひもといていく。

 「ソーシャル・イントラプレナーシップ(social intrapreneurship)」という言葉がある。これは、起業家が社会問題を解決するために組織を立ち上げる「社会的アントレプレナーシップ(社会的起業家)」と、従業員が新しい製品やサービスを革新する「ビジネスイントラプレナーシップ(社内起業家)」を組み合わせた造語である。

 従業員がソーシャル・イントラプレナーシップを発揮することにより、企業の社会的責任(CSR)を推進する活動を行うことができるため、世界の様々な企業で徐々に取り入れられ始めている考え方である。

 例えば、オーストラリアの大手銀行ウエストパックでは、社員個人やチームが自ら目標を決めて企業ボランティアや寄付を行うことを推奨している。2017年当時、政策コンサルタントだったダニエル・ヘイコックスは、ウエストパックの支援を利用して、難民向けの金融リテラシー・プログラムを開始した。結果的に彼は、チーム全員を巻き込んだ素晴らしいCSRプロジェクトを始めることに成功している。

CSRコミットメントの現状

 近年ビジネスの世界では、ステークホルダー・エンゲージメントに注目が集まっている。しかしながら、多くの企業では、CSRへのコミットメントがなかなか進んでいないのが現状である。

 コンサルティング会社マッキンゼーが米国企業の従業員1000人を対象に調査したところ、82%の従業員が企業に目標(purpose)を持つことが重要だと回答している。しかし、企業が掲げる目標がよい変化を促したと答えたのはわずか42%にとどまった。

 企業は、CSRを全社的に受け入れ、実践するために、従業員とその創造性を取り込む必要がある。ソーシャル・イントラプレナーシップは、それを実現する機会を提供し、その過程で有益なプロジェクトを生み出している。

ソーシャル・イントラプレナーシップがもたらすメリット

 ソーシャル・イントラプレナーは企業内で大きな価値を引き出すことができる。例えば、U.S. Farmers & Ranchers in Actionの最高経営責任者(CEO)であるエリン・フィッツジェラルドは、米国の酪農産業の中心組織Dairy Management Inc.のリーダーを説得し、酪農産業全体の社会・環境に関する目標を設定させることに成功している。

 彼女は、10年以上にわたり内部から働きかけ、2億3800万ドルに相当する酪農産業のバリューチェーン全体の環境イニシアチブを開始した。

 特筆すべき点は、主要なステークホルダーがこの取り組みに賛同、協力したことで、最終的に124にものぼる代表的な組織からなるサステナビリティ協議会を設立したことである。

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